阪神・淡路大震災で失われたモノ、残されたモノ、生まれたモノ…そんな記憶を記録します。

青池 憲司 監督作品 映画『宮城からの報告—こども・学校・地域』製作委員会

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コラム・撮影報告

石巻撮影報告
3/17

東日本大震災から1年

text by 青池憲司

2012.3.17  up

3月11日

東日本大震災から1年が過ぎました。3月11日の被災地石巻は朝からザワザワとせわしない空気につつまれていました。どのように午後2時46分をむかえるのか。人もまちもおちつかない心持ちの渦巻がうずまいて。うずまいて。わたしも心悸があがりました。

その時間、わたしたち撮影隊は、津波と火災に遭った門脇小学校の校庭にいました。校庭では、門小児童と家族が、地域の住民さんが、この日を期しての訪問者が、「時」を告げるサイレンとともに黙祷し、手を合わせました。ある人たちは門小校舎に向い・・・ ある人たちは更地とその先の海に向い・・・

集った人たちのなかから、いやぁひさしぶり、という声がきこえます。あのときは? あれからは? いまは? とおたがいに問いかけます。かつておなじ町内に住んでいた人どうしでも、こんな再会が、まだ稀ではないのです。

「石巻や東松島、女川に住む親族合せて、21人の葬式をだしました」ということばがきこえてきたときは、心身がこわばりました。

卒業式

3月16日。日本製紙石巻工場の煙突の煙がめずらしくまっすぐにのぼり、春空に鳶が舞い、ひゅーひゅろろと鳴いています。門脇小学校で卒業式が行われました。震災当時5年生だった児童、わたしたちが昨年6月末から撮影してきたこどもたちです。

この日の、彼/彼女のアクションを見ていると、「きみたちの足どりの下から新しい世界が生まれる・・・」という、古い詩句がうかんできました。サンジョン・ペルスの。・・・どうやら、わたしは、われにもあらず感傷的になっていたようです。いけません。

その夜。思い立って、出初めた春野菜とベーコンを買ってきてポトフをつくりました。チリの赤ワインを添えて"晩餐"にしました。

(ここまでかいて昨夜は眠てしまい、朝読み返して、こんな要領を得ない報告をもらったら困るよなぁ、と思いながら、ま、いいか、土曜の朝だし、と迷惑もかえりみずに送ります。ご寛恕を)

わたしたちの撮影は4月末までつづきます。

#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。

青池憲司

ドキュメンタリー映画監督。震災後、親交のあった長田区の野田北部・鷹取地区に入る。"野田北部を記録する会"を組織し5年間に渡りまちと住民の再生の日々を映像で記録。
「記憶のための連作『野田北部・鷹取の人びと』全14部」(1995年〜99年,山形国際ドキュメンタリー映画祭正式招待作品)を発表、国内外で上映。2002年「日本建築学会文化賞」受賞。

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