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兵庫県南部地震概要
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- 発生時の気象
- 平成7年(1995年)兵庫県南部地震[1]
- Hyogo-ken-nanbu- Earthquake, 1995
- (The 1995 South Hyogo Prefecture Earthquake)[2]
- 阪神・淡路大震災[3]
- The Great Hanshin-Awaji Earthquake Disaster[2]
- EQ 1995-000003 JPN[11]
- 平成7年(1995年)1月17日(火)5時46分51秒8(±0.0)[2]
- 1995 January 16 20:46:52[9]
- 淡路島 北緯(N)34度36分7(±0.3)
- 東経(E)135度2分2(±0.3) [2]
- 16km(±2km)[2]
- 7.3(大地震)[2]
- 6.9[2]
- 最大震度7(激震)[2]
- 南北 818.0gal/東西 617.3gal/上下 332.2gal[2]
- 南北 177.7mm/東西 179.4mm/上下 103.4mm[2]
- 10〜15秒程(最も大きい揺れは3秒程)[4]
- ツナミナシ[2]
- プレート内地震(内陸型/直下型) & 活断層型(横ずれ断層型)[5][17]
- 兵庫県の10市10町及び大阪府の5市[32]
- 気温:3.4℃、湿度:54%、風速:4.6m/s、風向:北東[35]
出典元
[1]『地震月報 平成7年1月』運輸省気象庁,1995年2月
[2]『気象庁技術報告第119号 平成7年(1995年)兵庫県南部地震調査報告 ─災害時自然現象報告書─』気象庁,1997年3月
[4]『阪神・淡路大震災復興誌 1.』震災復興誌編集委員会,兵庫県/(財)21世紀ひようご創造協会,1997年
[5]『ニュートン 2000.10月号 緊急大特集 ワーストケース東京壊滅巨大地震』ニュートンプレス,2000年
[9]Historic Earthquakes:Kobe, Japan 1995 January 16 - U.S. Geological Survey(USGS/アメリカ地質調査所)
[11]GLIDE Record - Asian Disaster Reduction Centre (ADRC/アジア防災センター)
[17]『大震災サバイバル・マニュアル』朝日新聞社編/朝日新聞社,1996年
[32]阪神・淡路大震災について - 国土庁防災局:平成8年1月9日
[35]過去の気象データ検索「神戸・1995年1月17日午前6時」の観測値 - 気象庁
[ALL]阪神・淡路大震災の概要 - 内閣府『阪神・淡路大震災教訓情報資料集』
- 野島断層 (旧北淡町小倉地区 1996年5月)
保護の為にシートが掛けられている。
用語解説
地震名 The Earthquake Name
1995年1月17日10時20分、大阪管区気象台で「地震名称」について打合せ。11時30分『地震情報』第10号(大阪管区気象台)において、地震名の決定を発表した[2]。
気象庁では1961年の庁議決定以来、教訓を伝えたり災害発生後の復旧活動を円滑に実施するために、一定の基準を超えた「顕著な被害」を引き起こした地震等の「現象」についてルールに基づいて命名している。地震の場合は「元号(西暦年)+地震情報に用いる地域名+地震」とするのが原則[12]。
関連リンク
- 顕著な災害を起こした自然現象の命名についての考え方(平成16年3月15日 気象庁) - 気象庁[12]
参考文献
- 『災害時地震・津波速報 平成7年(1995年)兵庫県南部地震』運輸省気象庁,1995年1月31日
災害名/一般呼称 The Earthquake Disaster Name
1995年2月10日の閣僚懇談会において、地震の呼称問題が取り上げられた。そこで政府によって通称を名付けることが確認される[23]。そして14日、閣議口頭了解にて災害名が決定された("閣議口頭了解"とは、閣議書を作成しないものの、内閣の意思決定としての効力の変わりはない)。
「兵庫県南部地震による被害については、その規模が特に大きいことに加え、今後の復旧・復興対策の推進の際に統一的な名称が必要なことから、災害名を阪神・淡路大震災と呼称することを十四日の閣議において御了解いただいたところであります」(第132回国会 平成7年2月15日 災害対策特別委員会にて 小里震災担当大臣)[13]。
その後の以下の法律を皮切りに、各省庁の震災復興関連の法律制定にあたってはこの名称が用いられた[18]。
このように地震名とは別に災害名を政府が決定した事例は(おそらく)ない。その背景には、戦後最大の災害となった被害の大きさに鑑みマスメディアによってさまざまな呼称で伝えられた結果[25]、復興支援や情報共有の支障をきたしたり統一感の欠如や被災者からの不満・違和感が起こり、次第にその必要性が求められるようになっていた。
「阪神大震災」は17日から一部の放送で使用されたようだが、使用の統一として最初に命名したのは毎日新聞大阪本社で、17日午後に決定し1月18日朝刊から使い始めた[6]。それ以降、他社も追随していくことになる。
これに異を唱えたのが、震源地の淡路島だった。
どこで起きた地震なのかと、他人事のような気がする(略)抗議したいがそれどころではない。(柏木和三郎 津名町町長)[7]
また被害も大きく野島断層も表出した震源地の北淡町町長の小久保雅雄は、国や県の施策に淡路を忘れさせないよう、視察や調査に来町した大臣や国会議員にさかんに訴えた。「阪神大震災」とマスメディアで呼ばれ始めた状況に危機感すら覚えたという。
日本人というのは、何事も忘れっぽい民族だ。今度の大地震の呼び名から淡路が省かれた場合、二年、三年の間は人々は淡路も大きな被害を受けたことを覚えているだろう。しかし、これが五年たち十年たってくると、人々はすっかり淡路のことを忘れてしまうだろう。
そうなると、これから実施されるであろう広範囲な分野における様々な復旧、復興対策の対象地から除外される恐れもある。人々の記憶には阪神地区の被害だけが残る。それでは淡路の被害者や犠牲者はうかばれない。県庁での災害対策本部長会議で、私は早速このことを知事はじめ出席者に申し上げた。知事は翌日から県の公文書は全て「阪神・淡路大震災」という表現で統一してくれた。(「第七章 戦友達の手記」より「淡路を忘れないで」207p)[34]
こうした声を受けて、「阪神・淡路」という名称で統一させていく方向に固まっていった。
近畿、関西、京阪神、阪神間、大阪湾岸、畿内などこの地域を呼ぶ名称は様々あり、その範囲や文化も様々である。「阪神」だけを取り上げても、一般的には神戸と大阪の間、兵庫県の西宮から尼崎、伊丹、宝塚などの地域を指すが、「阪神工業地帯」となると姫路から和歌山あたりまでの大阪湾岸地域一帯までに及ぶ。
だが、今回の被災地(大阪北部の一部、阪神、神戸の海側、明石、淡路島)全体を統合する概念や呼称はうまい具合に存在しなかった。だからメディアも被災者も頭を悩ませたのだが、これについては次のような意見もあった。
地震の被災地域に対応する、『阪神』を超えてそれを統合する歴史的文化概念が存在していないということを、このことは意味しているのである。(略)地域生活に立脚した法概念が存在=成立していないということをも、それは意味しているのである。(河上倫逸,573p)[8]
一方、この地震では発生直後からの政府の初動対応が極めて鈍かったことが危機管理上の問題となったが、その当事者である内閣官房スタッフの間では当て付けのような意見もあったようだ。曰く、
気象庁が初めから『南部地震』などと中途半端な名称を使わずに、『大震災』と命名しておけば政府全体の立ち上がりが違っていた可能性もあった。(87p)[24]。
また、京都在住の作家・精神科医の野田正彰は、
社会は破壊をどのように受け止め、いかに反応していくのか(略)。被災地が大都市であればあるほど、自然科学(地球物理学)による呼称ではなく、社会科学的観点によるものであるべきだろう。そう考えて、私は地震の翌日、新聞の論考のなかで『関西大震災』と書いた。
と記し、この呼称と破壊された大都市の姿との乖離を指摘した[28]。
このような気象庁の"自然科学的命名"については、その後の地震災害においても議論が幾度となく繰り返される。
「2004年新潟県中越地震」で新潟県は、中山間地で震度7を記録たこの地震を「地域社会への深刻な打撃は『阪神・淡路大震災』にも匹敵する」として独自に「新潟県中越大震災」と呼称し、県の行政資料でも正式にこの名称を使用している[29]。また「2008年岩手・宮城内陸地震」では、宮城県大崎市長が気象庁を訪問し「地震の名称が風評被害の原因になっている」として地震名の変更を要望した[30]。
"兵庫県南部地震"の呼称以外のメディアでの使用例[25]
- 近畿烈震 : 朝日新聞(1月17日夕刊)
- 近畿直下地震 : フジテレビ(1月18日ニュース)
- 近畿大地震 : フジテレビ(1月18日特番)
- 阪神大震災 : 毎日新聞、毎日放送(1月18日〜)、関西テレビ、日本テレビ(1月19日〜)、TBS、フジテレビ(1月20日〜)、讀賣新聞(1月22日〜)、産経新聞、朝日新聞、日本経済新聞、NHK(1月23日〜)、共同通信、神戸新聞、FLASH、週刊女性(1月24日〜)、週刊文春、女性セブン(1月26日〜)、FRIDAY、週刊朝日増刊号(1月27日〜)、
- 関西大地震 : テレビ朝日(1月18日ニュース)
- 関西大震災 : アエラ(1月23日〜3月18日増刊号)、週刊現代、サンデー毎日、アサヒグラフ(1月23日〜)、女性自身(1月24日〜)、FRIDAY増刊号(1月27日〜)、諸君(3月号〜)
- 神戸地震 : 週刊新潮(1月26日〜)
- 神戸大地震 : TBS(1月18日報道特番)
- 神戸大震災 : 産経新聞(1月19日)、フジテレビ(1月19日ニュース)、週刊読売(1月21日〜)、東京新聞(〜1月23日)
- ほかに書籍では、近畿地方大地震、南兵庫大震災、兵庫地震、淡路地震なども
参考文献
- 『ドキュメント希望新聞 阪神大震災と報道』毎日新聞大阪本社/毎日放送報道局編,毎日新聞社,1995年9月[6]
- 『震災大臣特命室—震度7と闘う男たちの記録』小里貞利,読売新聞社,1995年[34]
- 『阪神・淡路大震災誌』朝日新聞大阪本社編,朝日新聞社,1996年[8]
- 参議院 第132回国会 第4号 平成7年2月15日 災害対策特別委員会 第4号 - 国会会議録検索システム[13]
- 阪神・淡路大震災に係る法律 - 『阪神・淡路大震災について』平成8年1月9日国土庁 防災局 防災企画課[18]
- 『情報、官邸に達せず』麻生幾,新潮文庫,新潮社,2001年[24]
- 『災害救援』野田正彰,岩波新書,岩波書店,1995年[28]
- 『ドキュメント 希望新聞—阪神大震災と報道』毎日新聞大阪本社/毎日放送報道局,毎日新聞社,1995年
関連新聞記事
- [2008/07/09]「地震は局地。風評被害で客来ない!」宮城・大崎市長が地震名変更を要望(産經新聞)[30]
- [1995/02/11]政府の震災呼び名 は「阪神・淡路」に(讀賣新聞大阪本社)[23]
- [1995/02/10]「阪神・淡路大震災」に 政府、名称変更の方針(神戸新聞夕刊)
- [1995/01/27]震災報道 命名 「阪神」の範囲あいまい(朝日新聞東京本社)[7]
関連リンク
- 新潟県中越大震災関連情報:「新潟県中越大震災」の呼称について(2004年11月29日) - 新潟県[29]
GLIDE Number(世界災害共通番号)
GLIDE(Global unique disaster Identifier)とは、「自然災害情報を一意に識別するための参照コード・システム」。国際災害情報専門家会合(2001年)で提唱され、同年よりアジア防災センター(ADRC)が、国連人道問題調整事務所(OCHA・ReliefWeb)などとともに運用する。
これまで国際的な共通の自然災害データベースがなく、内容も国によってまちまちだったり国や組織によって災害名がバラバラだったりし、国連防災世界会議(2005年)などでも課題の一つとして上げられていた。そこで支援や防災に生かそうと災害情報を共有化し、データベースを構築することとなった。
- 【構造】災害タイプ - 西暦 - 災害の自然現象の通し番号 - 国コード
- 【例】EQ 1995-000003 JPN
兵庫県南部地震のEM-DAT data(Disaster Number)
- EM-DAT data(Disaster Number):1995-0016
- 以前よりルーベンカトリック大学(Universit Catholique de Louvain - Brussels - Belgium)災害疫学研究所(CRED)では、20世紀以降の国際災害データベース「EM-DAT」を構築している。上の兵庫県南部地震の場合は「発生した年 - その年の16番目の大災害」との意。
関連リンク
- GLIDE Record - Asian Disaster Reduction Centre (ADRC)
- アジア防災センター(ADRC)
- EM-DAT :The International Disaster Database - ルーベンカトリック大学災害疫学研究所(CRED:Centre for Research on the Epidemiology of Disasters)
- ルーベンカトリック大学災害疫学研究所(CRED:Centre for Research on the Epidemiology of Disasters)
震源時
- 地震から止まったままの時計 (長田区 高速長田駅前 1995年2月)
発生日時。「UTC」は協定世界時(Coordinated Universal Time)のことで、JST (日本標準時) は UTC + 9:00。
当時、この17日とはちょうど4年前の1991年にイラク空爆が開始されて湾岸戦争が勃発した日であり、1年前の1994年にアメリカ・ロサンゼルスでノースリッジ地震が発生した日として記憶に新しかった。この年は15日(日)が成人の日、翌16日(月)がその振り替え休日で、17日は連休明けの平日となっていた。
この朝の日の出時刻は、7時5分。発生時の5時46分は、まだ真っ暗闇だった[26]。
現在、毎年この日とこの日を含む週間(15日〜21日)は、「防災とボランティアの日」「防災とボランティア週間」とすることが、1995年12月15日の閣議了解によって定められた。この期間には全国各所で災害ボランティアや自主防災活動についてのイベントが開催されている[19]。
また民間ではこの日が「おむすびの日」と定められた。これを提唱する"ごはんを食べよう国民運動推進協議会"によると「被災者は、ボランティアによる炊き出し(おむすび)に助けられました」から決められたという。前述のイベント等でも炊き出し活動なども行っている。
この日の正午の気温5.2度で、最高気温8度。午後の平均風速4m/s前後で、1日でも平均風速3m/s以下と比較的低風速だった。
関連新聞記事
- [2010/10/08]震災発生時刻に誤解招く表現 人と防災未来センター(神戸新聞)
関連リンク
- 防災とボランティア週間 防災とボランティアの日 - 内閣府(災害予防担当)[19]
- ごはんを食べよう国民運動推進協議会
動画
- 1995年1月17日 神戸市中央区「午前6時30分 中央区から第一報」 - リエゾン被災人:NHK大阪/NHK神戸[26]
マグニチュード
マグニチュード(M)とは、地震そのものの大きさ(エネルギー)を表すもので複数の計算法がある(下記参照)。気象庁はわが国で最も観測実績があり速報性に優れた気象庁マグニチュード(Mjma)を発表している。
一方、国際的にはMはモーメントマグニチュード(Mw)の計算値で広く発表されている。このMwはCMT解析[31]で求められた地震エネルギーをMとして表したもので、地震のエネルギーをより正確に表すという。
マスメディアによる報道では、しばしば世界の地震を比較する際にMでその大きさを比べることがある。だがそのほとんどの場合、MjmaとMwを混在させて両者を混同している。国内の地震で発表されるM値は「Mjma」だが国外のM値は「Mw」であるため、同じ算出値のMで比較しないことには正確にかける。
気象庁マグニチュードは、当初「M7.2」と発表された。しかし2001年10月の鳥取県西部地震では、兵庫県南部地震より大きいM7.3と算出された一方で、実際の被害は比較的小さかった。これをきっかけに気象庁マグニチュード検討委員会(座長・阿部勝征東大地震研究所教授)が設置される。そして2001年4月23日、マグニチュードの新しい算定方法の導入が決定され、その計算により阪神大震災のMを7.2から7.3に修正したほか、芸予地震のMも6.4から6.7に変更された。
M7以上の地震のことを指して「大地震」と呼んでいる。(”おおじしん”と発音。『NHKことばのハンドブック』)
兵庫県南部地震のマグニチュード一覧 [発表元][1]
- 気象庁マグニチュード(Mjma) : 7.3 [気象庁]
- 実体波マグニチュード(mb) : 6.4 [USGS(アメリカ地質調査所)]
- 表面波マグニチュード(Ms) : 6.8 [USGS],6・5 [カルフォルニア大学バークレー校]
- モーメントマグニチュード(Mw) : 6.9 [気象庁],6.8 [USGS],6.9 [ハーバード大学]
- 余震面積から求めたマグニチュ-ド(Mm) : 6.9 [気象庁]
- 有感関係から求めたマグニチュ-ド(Ms4) : 7.4 [気象庁]
関連リンク
- 報道発表資料 気象庁マグニチュード検討委員会の検討結果(平成13年4月23日) - 気象庁:PDF
- 報道発表資料 気象庁マグニチュード算出方法の改訂について(平成15年9月17日) - 気象庁:PDF
- CMT解とは何か - 気象庁[31]
- 気象庁マグニチュードの改訂について/気象庁地震予知情報課 - 社団法人日本地震学会ニュースレター vol.15 no.3 (6/18)
- マグニチュード - 東京大学地震研究所 地震火山噴火予知研究推進センター
- 「主な地震・火山災害の情報」気象庁データの解説(詳細) - 国土交通省 防災情報提供センター
関連新聞記事
- [2001/04/24]7・2から7・3へ 阪神大震災のM見直し その影響は(神戸新聞)
震度(気象庁震度階級)
震度とはある地点での地震による揺れの強さを表すもので、気象庁が定める日本国内の単位。1995年当時の気象庁震度階級は0〜7までの8階級(現在は10階級)で、震度6までは計測震度計で観測し、「7」については現地調査によって決定することとなっていた。
神戸海洋気象台(神戸市中央区中山手通7丁目)計測の地震直後の発表は「神戸・洲本が震度6」(機械計測震度は「6.37」)だったが、神戸の通信回線が間もなく不通になった為に、NHKに口頭で伝えられていたその情報は再確認ができずに一度取り消され、テレビでは10数分間神戸の震度が表示されなかった。さらに大阪管区気象台発表の地震津波情報も第2号まで記載ナシとされていた。[2]
翌18日には、大阪ガスやJR総合技術研究所設置の地震計の記録が、震度7相当だったと判明する[21]。
気象庁地震機動観測班は1月18日から2月6日までの間、延べ50班(延べ160名)を超える観測班員により現地調査を実施した。これにより1月20日「場所によっては震度7」と追加修正し、観測史上初めて震度7を記録した[26]。引き続き詳細な調査を進め、2月7日に震度7の分布地域を確定させた[1]。
震度7の地域は神戸市須磨区鷹取、長田区大橋、兵庫区大開、中央区三宮、灘区六甲道、東灘区住吉、芦屋市芦屋駅付近、西宮市夙川付近などのほぼ帯状の地域と、宝塚市の一部及び淡路島の東北部の北淡町、一宮町、津名町の一部の地域[22]。
この地帯のことを総称し「震災の帯」と呼ばれている。しかしながら当時はこの震災の帯の中に震度計が設置されていなかったために、真の観測最大値は不明。最も近かった神戸海洋気象台も、高台の地盤の安定した洪積層上にあった(神戸市内でも気象庁の観測地点はこの1ヶ所だけだった)。これに対し大阪ガスやJRのものは「震災の帯」の中やその近くにあった為、この地震を代表する観測値として使用する場合は、気象庁のではなく大阪ガスやJRのデータを使用するべきだ、という指摘もある[27]。なお「震災の帯」の説明は10年間ほど地震学の謎で過去に様々な説が提唱されていたが、近年スーパーコンピュータ「地球シミュレーター」での計算によってこれを再現でき、その説明が可能となってきた[10]。
このような観測機器がなかった地域の地震の揺れや加速度などを推定する方法として、墓石の転倒調査からの推定する方法が以前から行われている。全国にあり形状もほぼ一定のものが多いなどの比較条件が確認できるためで、その調査結果から計算し、各種の数値を推算するという[28]。
今回の「最大震度7」という発表が3日も遅れたことは、危機管理や復旧支援の観点からも実情に即しておらず、その判断に大きな影響を与えたとの批判もあった。これをきっかけに気象庁は翌1996年4月以降、計測震度計により自動的に観測し速報することとなり[25]、全国の震度計の設置台数は大幅に増えて観測網が広がっていった。
動画
- 1995年1月17日 淡路市「淡路島北淡町の被害と野島断層」 - リエゾン被災人:NHK大阪/NHK神戸
- 1995年1月17日 神戸市中央区「1月17日午前5時46分 NHK神戸局内」 - リエゾン被災人:NHK大阪/NHK神戸[20]
観測データ
- 兵庫県南部地震(阪神大震災):関連資料(参考) - 財団法人 日本気象協会関西本部:震災文庫(神戸大学附属図書館)。PDF全文ダウンロード,1995年2月
- CMT解(pdfファイル) - 気象庁
- 87型電磁式強震計で観測された主な地震 兵庫県南部地震 - 気象庁:強震波形を表示
- 平成7年(1995年)兵庫県南部地震の余震活動 - 気象庁
- 1995年兵庫県南部地震の神戸海洋気象台の強震記録について - 筑波大学 システム情報工学研究科地震防災・構造動力学研究室 境有紀[27]
- 衛星画像&データ「地球が見える」−港町神戸と震災からの復興 - 宇宙航空研究開発機構(JAXA:Japan Aerospace Exploration Agency)地球観測センター(EORC) :被災地の衛星写真
- 1万分の1「兵庫県南部地震に伴う地震断層ストリップマップ - 産業技術総合研究所 活断層研究センター
関連リンク
- 震度について - 気象庁[25]
- 震度に関する検討会 - 気象庁:震度観測に関して消防庁と気象庁で設置
- 気象庁震度階級関連解説表 - 気象庁:平成21年3月31日より改定
- 地震について - 気象庁:よくある質問集
- 震度 - 東京大学地震研究所 地震火山噴火予知研究推進センター
- 震度7の詳細分布図 - 国土交通省近畿地方整備局 神戸港湾事務所「電子資料館 みなとと防災」[22]
関連論文
- 墓石の転倒調査から推定した兵庫県南部地震の際の神戸市およびその周辺での震度分布/翠川三郎,藤本一雄 - 社団法人日本建築学会:『日本建築学会構造系論文集(490) pp.111-118 19961230』CiNii PDF[28]
- 兵庫県南部地震の概要/地殻調査部 橋本学 - 国土地理院:『国土地理院時報(1995,83集)』
- 測地測量が捉えた兵庫県南部地震に伴う地殻変動 - 国土地理院:『国土地理院時報(1995,83集)』
- 阪神・淡路大震災から学ぶ〜直下型地震のメカニズムと被害〜 - 社団法人 地盤工学会関西支部:震災文庫(神戸大学附属図書館)。PDF,1998年1月
- 阪神・淡路大震災調査報告書(解説編) - 社団法人 地盤工学会:震災文庫(神戸大学附属図書館)。PDF,1996年3月
- 深部不整形地下構造を考慮した神戸市の地震動の増幅特性解析 : 兵庫県南部地震における「震災の帯」の解釈 - 社団法人日本建築学会:『日本建築学会構造系論文集 No.488(19961030)』CiNii PDF
最大加速度
神戸海洋気象台(神戸市中央区中山手通7丁目・洪積地盤・平屋1階)の観測値。
ガル(gal)=加速度の単位で、地震の揺れの強さを表す。1ガルは速度が毎秒1cmの割合で速くなる状態。約980ガルが重力に等しく(=地球上で物を落下させると秒速980cmの加速度が生じる)、400ガル以上になると震度7にほぼ対応する。
1995年当時の現行耐震設計基準の最大予測値は、400ガルであった。
関連リンク
- 1995年兵庫県南部地震の建物被害に基づく最大地動速度分布に関する考察/林康裕,宮腰淳一,田村和夫 - 社団法人日本建築学会:『日本建築学会構造系論文集(502) pp.61-68 19971230』CiNii PDF
- 1995年兵庫県南部地震の低層建物被害率に基づく最大地動速度の推定/林康裕,宮腰淳一,田村和夫,川瀬博 - 社団法人日本建築学会:『日本建築学会構造系論文集(502) pp.61-68 19971230』CiNii PDF
震動継続時間
主要動の震動継続時間(神戸海洋気象台観測値/神戸市中央区中山手通7丁目・洪積地盤・平屋1階)。観測点の位置・地盤・地層構造・地形・建物などに左右されるために値の差異は大きいので、ここに挙げたのは参考値。
水平動の震動継続時間が加わり最大で40秒以上という記録もある(住宅・都市整備公団観測値/大阪市此花区・沖積地盤・住都公団高見高層住宅31階)。
関連リンク
- 地震波到達時刻 - 神戸市教育委員会:兵庫県南部地震データ集
津波注意報
大阪管区気象台は5時50分、「11・12・13・14・15区ツナミ ナシ」の津波注意報を発表した。[1]-
しかし6時30頃より、最大10cm潮位変化が30分周期の上下動として約3〜4時間持続したとの観測もある。観測したのは建設省国土地理院海南検潮所(和歌山県海南市)。翌18日の地震予知連絡会では、これについて「津波とみられる」と発表した。しかし気象庁では津波の観測はない、としている。
関連新聞記事
- [1995/1/20]地震40分後に津波 最大10センチ 建設省検潮所が観測(讀賣新聞大阪本社朝刊)
- [1995/1/20]津波観測と地理院発表 気象庁は「なし」(朝日新聞大阪本社夕刊)
被災地
被災地(被災自治体及び被災地域)とは、災害救助法の適用された自治体の区域のこと。同法に基づき適用地域に国の施策や自治体による救助、援助が行われた。
「阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」の中では、
この法律において「特定被災地方公共団体」とは、兵庫県及び阪神・淡路大震災による被害を受けた市町村で政令で定めるものをいう。「特定被災区域」とは、阪神・淡路大震災に際し災害救助法 (昭和二十二年法律第百十八号)が適用された市町村の区域をいう。
と定義されている。
災害救助法の適用された全「15市10町」 (現在は市町合併のため、市町名と数は異なっている)[32]から計上された数値が国の統計として集約され、被災地のデータとして確定されている。
しかしながら震災に関する多くの調査やデータ上では、被害の大半を占める兵庫県内「10市10町」 を被災地とすることが一般的な解釈となっているようだ。これは大阪府内の各種被災データが圧倒的に少なく入手もしにくいことや、府内では兵庫県のような被災者支援のための復興基金を設立しなかったことも一因だと考えられる。この基金の有無が両府県の支援策の格差を生じさせたからだ。
ただ地震の影響だけで言えば、自治体からの被害報告は兵庫・大阪の適用地以外の同県府内の市町や、近県の京都府、徳島県からもあり、死者や負傷者、建物被害などが確認されている[33]。また2月17日現在の災害警備本部集計分では、奈良県、香川県、滋賀県、和歌山県、岐阜県などで複数人の負傷者が、また広島県では複数の建物の一部損壊被害が計上されていた[33]。
しかし支援は行政区単位に行われるので、災害救助法の適用基準に満たない被害の場合は、その法に基づく国からの各種支援は行われず、被災地としての統計にも計上されない。ただし京都府の人的被害の例など、各自治体が震災の影響だと認めたものは、統計に挙げられ反映されている。
兵庫県の災害救助法適用市町と日時
- 1月17日 神戸市 (12:00)
- 1月17日 津名町、淡路町、北淡町、一宮町、東浦町 (17:00)
- 1月17日 尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市 (23:00)
- 1月18日 川西市
- 1月19日 明石市、五色町
- 1月22日 三木市、洲本市、西淡町
- 1月31日 三原町
- 2月 1日 緑町、南淡町
大阪府の災害救助法適用市
- 豊中市
- 大阪市
- 池田市
- 吹田市
- 箕面市
参考文献
- 災害救助法 - 内閣府地震火山担当
- 阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(平成七年三月一日法律第十六号) - 内閣府地震火山担当
- 『兵庫県南部地震災害義援金報告書 平成12年1月』兵庫県南部地震災害義援金管理委員会,2000年[33]
- 『ドキュメント 阪神大震災全記録』毎日新聞社,1995年[34]
関連新聞記事
- [1998/01/15]復興へ 第18部 この国/震災3年目の決算(3)支援の格差/広域災害に仕組みなし(神戸新聞 )
発生時の気象
神戸「1995年1月17日午前6時」の観測値。(当時の神戸海洋気象台旧館・新館<神戸市中央区中山手通7丁目>観測。現在は移転。)
「神戸」の観測値(気象庁神戸海洋気象台)
1月17日-1時間ごとの観測値
- 【午前5時】気温:2.9℃、湿度:69%、風速:2.1m/s、風向:東北東
- 【午前6時】気温:3.4℃、湿度:54%、風速:4.6m/s、風向:北東
1月17日の観測値
- 日照時間(h):1.6
- 平均気圧(現地):1015.1hPa
- 平均蒸気圧:4.5hPa
- 平均気温:3.9℃
- 最高気温:8.0℃(15:40)
- 最低気温:1.4℃(24:00)
- 平均湿度:56%
- 最小湿度:39%(15:43)
- 降水量/降雪量:0.0mm
関連リンク
- 過去の気象データ検索 - 気象庁
- 日ごとの値-神戸 1995年1月17日 - 気象庁・過去の気象データ検索
- 1時間ごとの値-神戸 1995年1月17日 - 気象庁・過去の気象データ検索