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阪神・淡路大震災人的被害(死者数)
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出典元
[1]『阪神・淡路大震災について(確定報)』総務省消防庁,2006年05月19日発表
[2]阪神・淡路大震災の死者にかかる調査について(2005年12月22日記者発表) - 兵庫県
[23]震災障害者及び震災遺児の実態調査について(2010年8月6日記者発表) - 兵庫県
[3]震度分布を既知情報とした人的被害の推定手法 -死傷から閉じこめ者分布へ-/小山真紀,太田裕,村上ひとみ - 東濃地震科学研究所:『東濃地震科学研究所報告 Seq. No.3』PDF
[16]地震発生が5時46分だったら…,讀賣新聞大阪本社,1995年1月21日朝刊
[4]兵庫県警察本部,1999年5月5日
[5]兵庫県内復興住宅 独居死33人,神戸新聞,2016年1月13日
[6]『阪神・淡路大震災復興誌 3. 1997年度版』震災復興誌編集委員会,(財)阪神・淡路大震災記念協会,1999年
[21]『震災遺児家庭の震災体験と生活実態—平成7年度調査結果報告』あしなが育英会,1996年
用語解説
死者数 - 直接死
この震災による死者とは、警察を含めた司法当局によって判断され、公式発表された者のこと。監察医もしくは臨床医が警察の要請により死体検案を行い、死因を外傷によるものか疾病なのかなど医学的に判断して死亡診断書(死体検案書)を発行した。その検案書に基づいて当局が「この震災による災害死」であるかどうかを判断した。
被災自治体はこの警察の公式発表を基に住民票等から遺族を調査し、「災害弔慰金の支給等に関する法律」[7]に基づく「災害弔慰金受給資格認定者」の通知を行った。このため「災害弔慰金受給資格認定者」のことを"災害死者"と定義付けることもできる。これらの認定者数(追加認定を含む)を被災市町が府県を通じて国(消防庁)へ報告し、それを集約したものが閣議了解を経て『防災白書』として公表される。これが国の公式な被災データとなっている[1]。
しかし災害死者と認定はされたが、遺族が災害弔慰金の支払いを行政に拒まれた例もあった。神戸市は、市内で亡くなったオーバーステイや観光ビザの外国人3名に対して「住民ではない」として支払いを拒否した[13]。
この「直接死」とは"最初に受給資格認定された者"の通称であり、その後に追加認定された「関連死」と相対させた形の呼称である。直接死の死因は、全てが調査され判明しているわけではない[8]。災害時の混乱と監察医の不足、医師の救命治療への優先などの事情が重なったために、詳細な検視や解剖を行えなかった例もあるという。また灰になるまでに焼かれた骨からは死因はもちろん性別や人数も量りかねなかった[9]。これを集計した国による人的被害の調査は、「5,488件分」の調査報告書がある[14]。全員分ではないが、それでも「大規模な震災において、今回のように死亡者に関するデ−タが系統的に検討された例は、我が国はもとより、国際的にも存在しない」という[10]。
また警察の検視を経ず、役所に死亡届を提出する遺族も少なくなかった。そうした遺族は火葬の後になって初めて警察に来所し、弔慰金申請のための災害死の認定を求めて調査書を作成した(この場合、死因は不明となる)。こうした例は、現場や病院での死亡確認を警察以外の市などの行政職員が確認した場合や、開業医に死亡診断書を書いて貰った場合などが含まれる。このために死者数の発表をしている兵庫県警と、市役所の把握している数に食い違いが生じ、そのズレは1月末の時点200人にも上った。そのため県警は2月3日に再集計して発表し直した。新聞等のメディアはこの警察発表を「死者」として報道するために、震災死として発表されていなかった遺族には少なからず影響があったという[18]。
2004年4月19日、神戸新聞社の調査により、震災死者数に誤りがあることが公表される[20]。これをきっかけに死者数の再調査を行うことになった[19]。しかし「個人情報は原則本人から収集」という県個人情報保護条例があったために、その例外摘要を求めて、県個人情報保護審議会で討議することとなる。そして「必要」との同審議会の答申を受け、9月、県は"10年目へ"となる年内の関連市町に対して死者の名前や死因など11項目の情報提供を正式に依頼した。しかし神戸市は「どこまで情報を提供すべきなのか、その精査に時間がかかる」として応じず、翌2005年3月25日、神戸市個人情報保護審議会でのそれを認める答申を受けてようやく調査を開始する。この再調査の中で二重計上されたり計上漏れがあったことが判明し、12月に県は「1人増」という最終結果を報告。翌2006年5月にようやく国の最終報告が「確定」した[1]。
参考文献
- 『人口動態統計から見た阪神・淡路大震災による死亡の状況』厚生省大臣官房統計情報部,1995年[14]
- 『阪神・淡路大震災−兵庫県の1年の記録』兵庫県,1996年[17]
- 『神戸黒書—阪神大震災と神戸市政』市民がつくる神戸市白書委員会編,労働旬報社,1996年,87p[13]
関連文献
- 『集団災害医療マニュアル 阪神・淡路大震災に学ぶ新しい集団災害への対応』吉岡敏治/田中裕/松岡哲也/中村顕,へるす出版
関連リンク - 災害弔慰金
- 災害弔慰金の支給等に関する法律 - 内閣府[7]
- 災害弔慰金の支給等に関する法律施行令 - 内閣府
- 阪神・淡路大震災に対する厚生省の取組み 7 災害弔慰金等の支給 - 厚生省:『厚生白書』
- 神戸市災害弔慰金の支給等に関する条例 - 神戸市
- 災害給付事業・各種給付件数(神戸市分) - 神戸市『神戸の生活再建・5年の記録』
- 災害弔慰金、災害障害見舞金の概要 - 厚生労働省:生活保護と福祉一般:災害救助・救援対策
関連リンク - 兵庫県
- 阪神・淡路大震災の被害確定について(平成18年5月19日消防庁確定) - 兵庫県
- 阪神・淡路大震災の被害状況(確定報)について - 兵庫県
- 阪神・淡路大震災の市町被害数値(平成18年5月19日消防庁確定) - 兵庫県
- 兵庫県/知事定例記者会見(2004年04月19日) - 兵庫県[20]
関連リンク - 人的被害
- 人的被害 - 内閣府『阪神・淡路大震災教訓情報資料集』
- 人的被害 - 総務省消防庁『阪神・淡路大震災関連情報データベース』
- 死亡時間別死者数 - 総務省消防庁『阪神・淡路大震災関連情報データベース』:『阪神・淡路大震災 警察活動の記録 都市直下型地震との闘い』兵庫県警察本部,1996年3月
- 阪神淡路大震災の研究III----死者と遺族/横山隆作
- 阪神大震災の死者に関する統計 - GARITTO ZAKUTTO:95年当時の様々な発表資料を記載した個人研究
- 阪神・淡路大震災街区別死傷者分布図 - 西宮市
- 統計トピックス[平成15年1月16日]:地域メッシュ統計でみる阪神・淡路大震災復興の姿 -神戸市における人口減50%以上の地域の人口が約2倍に- (国勢調査に関する地域メッシュ統計結果から) - 総務省統計局・政策統括官(統計基準担当)・統計研修所:平成12年国勢調査を基に分析
- 私の見た阪神・淡路大震災 - 大分県日田市消防団:長田区の遺体安置所でのボランティア活動の様子などの生々しい活動の記録
関連リンク - 死因
- 阪神淡路大震災による人身被害の実態(人口動態統計による) - (社)兵庫県医師会
- 地震直後の14分間で犠牲者の92%が亡くなったという事実 - トヨタホーム:東京大学 目黒教授の特別講義[ 講義2 ほんとうの阪神・淡路大震災]
関連論文
- 震災死と孤独死の死因分析とその法医学的検討 - 神戸大学:『神戸大学都市安全研究センター研究報告 特別報告2 19981200』CiNii PDF
- 「死体検案より」西村明儒ほか,『救急医学』19: 1760-4,1995年 - GHDNet 救急・災害医療ホ−ムペ−ジ[10]
- 「地震災害にみられる損傷の特徴」石井昇,『大震災における救急災害医療』,へるす出版,p.2-11,1996年 - GHDNet 救急・災害医療ホ−ムペ−ジ
- 「死体検案より」西村明儒ほか,『救急医学』19: 1760-4,1995年 - GHDNet 救急・災害医療ホ−ムペ−ジ
- 「死体検案(上)」西村明儒,吉岡敏治ほか編『集団災害医療マニュアル』へるす出版,pp.59-68,2000年 - GHDNet 救急・災害医療ホ−ムペ−ジ
- 震災後の医療需要の変化と医療支援 - GHDNet 救急・災害医療ホ−ムペ−ジ「災害医学・抄読会」愛媛大学救急医学教室
- VOL.4 地震による人的被害とその発生メカニズム/長寿社会総合科学講座 助手 生田英輔 - 大阪市立大学 大学院 生活科学研究科・生活科学部
- 統合データベースに基づく兵庫県南部地震による人的被害の発生機構に関する分析/ - 社団法人日本建築学会:『建築学会計画系論文集 (590) 20050430』CiNii PDF
- 兵庫県南部地震による死亡と重傷の発生機構の比較(震災と復興計画,都市計画) - 社団法人日本建築学会:『学術講演梗概集. F-120010731』CiNii PDF
- 阪神・淡路大震災の研究 III—死者と遺族、ライフラインの復旧—/横山隆作 - 淑徳大学社会学部:『淑徳大学総合福祉学部研究紀要』第43号、2009年3月
関連新聞記事
- [2004/04/21]連載 生と死の境 震災10年 守れ いのちを 第1部2.乖離「圧死」にも生存の余地(神戸新聞)[8]
- [2002/12/27]阪神・淡路大震災の死者 兵庫県が1人増を発表(神戸新聞)
- [1996/1/11〜26]連載・圧死を追う 被災地発・問わずにいられない(神戸新聞)
- [1995/02/13]遺族申請で災害死認定 西宮の女性に県警(神戸新聞夕刊)
- [1995/02/04]震災死者増加「遅れた認定」憤る遺族 「同じ犠牲者なのになぜ」(讀賣新聞大阪本社朝刊)[18]
関連新聞記事 - 震災死再調査[19]
- [2006/01/17]阪神・淡路大震災11年 伝える、災害の長期的影響(神戸新聞)
- [2005/12/23]大震災死6434人確定 県1人増を正式に発表(神戸新聞)
- [2005/12/23]自治体間の連携対策急務 教訓としての記録整備を (神戸新聞)
- [2005/12/21]区別集計にも誤り 震災死者数、総数変わらず 神戸(神戸新聞)
- [2005/12/20]震災死者数6434人に 計上漏れ二重記載 県再調査(神戸新聞)
- [2005/12/18]新たに49人の名刻む 神戸、慰霊と復興のモニュメント(神戸新聞)
- [2005/03/26]神戸市が県にデータ提供へ 震災死再調(神戸新聞)
- [2004/12/28]震災死者再調査 1.17に間に合わず(神戸新聞)
- [2004/11/06]震災死再調査、4市町でめど立たず(神戸新聞)
- [2004/09/23]震災死再調査を正式依頼 情報保護審答申受け県(神戸新聞)
- [2004/08/28]個人情報収集認める 震災死再調査で県審議会答申(神戸新聞)
- [2004/05/26]震災死再調査 県が必要性示す(神戸新聞)
- [2004/05/14]震災の直接死5512人 本社が再集計(神戸新聞)[12]
- [2004/04/20]関連死者の9割60歳超 大震災(神戸新聞)
- [2002/12/27]阪神・淡路大震災の死者 兵庫県が1人増を発表(神戸新聞)
死者数 - 関連死
「関連死(=震災関連死)」とは通称で、当初は医療関係者では「震災後関連疾病死者」などと呼ばれており、これはこの震災で新しく生まれた概念である[15]。消防庁による定義及び名称は「災害発生後疾病により死亡した者の内、その疾病の発生原因や疾病を著しく悪化させた事について、災害と相当の因果関係があるとして関係市町で災害による死者とした者」[19]。他にも「2次的震災死」「認定震災死」「認定死」などの呼称例がある。
厚生省(当時)は、直接的な死因以外にも震災との因果関係が専門家によって認められば災害弔慰金を支給するとの方針を出した。これを受けて被災自治体はそれぞれ医師、弁護士などで構成される災害弔慰金給付審査委員会を設けて判断を行った。この「災害弔慰金追加認定」の数が、いわゆる震災関連死者として計上された。行政で使われることがあるという「認定死」との呼び方は、ここに由来する。[11]。
追加認定は家族からの申請が原則。したがって弔慰金を受け取る身寄りのない関連疾病死者は審査対象ではなく、震災と「相当の因果関係がある」と推測されても、統計上の関連死には含まれない。だが認定者の中でも災害弔慰金を受け取る遺族がいなかった例も多かったという[直接死568人/関連死7人][12]。
この認定には前例も指針もなく、判定基準は関係市町間での統一も難しく個々の市町で相対的に判断された。だがその基準や審査課程、内容は全て非公開で、その後の災害被災自治体の問い合わせにも応じていない。
このような審査委員会の決定は恣意的とも言え、その後認定を巡っての裁判も起こされた。例えば神戸市の災害弔慰金給付審査認定率は65.6%である(神戸市災害対策本部,1995年11月13日)。
以前は消防庁の公式発表でも死者の内訳として直接死/関連死者数を公表していたが、現在の確定報では公表されていない。神戸新聞社による専門家の精査を通した独自集計によると、直接死・関連死の区分9人分が消防庁公表数と一致しなかった[12]。2005年12月の県による再調査では計上漏れと二重計上が訂正されたが、この区分修正までは行われていない。当サイトでは公表されている兵庫県分のみを参考値として掲載する。
またこれとは別に「震災遠因死」とされる事例もある。これは被災後の環境変化などの影響で後に病気や事故で亡くなったが、行政の弔慰金審査に認定されなかったり、またその手続きを行えなかったために公的には震災死としての認定されていない方のことを総称したもので、これも初めて用いられた言葉と概念である。この遠因による遺族たちが、神戸市内での犠牲者慰霊施設「慰霊と復興のモニュメント」(東遊園地内)の中に銘板を加えて欲しいと希望する。これに応え、2003年12月より神戸市外の犠牲者や遠因死も含めて「心が癒されるのであれば」として受け入れた。現在は「遠因死」の方の銘板も数十名が加わり、現在モニュメントに名前が刻まれた人は全てを合わせて「4,905人」となっている。(2010年12月19日 神戸新聞)。
こうした例の他にも、同様に関連死に含まれない仮設住宅や復興住宅の孤独死者も震災の犠牲者であるとする見方もある。こうした慰霊施設を希望する遺族もいない独居死者はこの慰霊施設の中にも入れないが、こうした例も概念的には遠因死と言えるだろう。
問い合わせ元
- 自治省消防庁震災対策指導室(1998/02)[19]
関連新聞記事
- [2009/12/30]犠牲者の記録、聞き取り連携へ 阪神大震災、神戸大調査会が他大学にも呼び掛け(産經新聞)
- [2004/04/29]生と死の境 震災10年 守れ いのちを 第1部10.記憶「線」に隔てられた最期(神戸新聞)[11]
- [2003/10/24]市外犠牲者名も刻字 神戸・震災モニュメント(神戸新聞)
- [1999/07/19]<復興へ>第21部 震災からのメッセージ「支援」ということ(3)死者の定義もあいまいだった/弔慰金支給、今も法廷で(神戸新聞)
- [1996/02/6〜19]連載<830人の無念>被災地発・問わずにいられない/21日目の死 つかんだ「生」守られず/揺らぐ定義 根拠あいまいな関連死/追悼なき死 医師の判断拒む仕組み(神戸新聞)
関連論文
- 研究成果 災害後関連死における防災計画に関する研究 - 日本大学理工学部社会交通工学科 水環境システム研究室(吉川勝秀研究室)
関連リンク
- 開かれた「慰霊と復興のモニュメント」の扉 - 阪神淡路大震災1.17希望の灯り
- 慰霊と復興のモニュメント・1.17希望の灯り - 神戸市
行方不明
裁判所で失踪宣告が出され、民事上は死者とされている。
関連新聞記事
- [2004/5/31〜06/09]焼骨 身元不明9人を探して(神戸新聞)[9]
- [2004/04]生と死の境 震災10年 守れ いのちを 第1部(神戸新聞)
負傷者数
2000年12月、兵庫県は被害状況について大幅に修正した。負傷者はそれまで病院や消防の情報に基づいていたが、兵庫県災害援護金の申請段階で診断書の内容を変更する例が少なくなかった為、この援護金申請書類による集計に切り替えた。
関連新聞記事
- [2006/05/28]震災被害ようやく確定−消防庁と兵庫県 評価基準なく作業手探り(神戸新聞)
- [2000/12/28]地震災の被害、重傷1900人増加 兵庫県修正(神戸新聞)
震災障碍者(震災障害者)
震災が原因の負傷で障害を負った被災者のこと。以前より障害を持っていた被災者はここには含まない。兵庫県・神戸市合同調査チームによる定義は、「平成7年1月17日震災当日において、家屋の倒壊等により外傷を負い、それが直接の原因となって身体障害を生じ身体障害者手帳の取得に至ったもの」[23]。負傷者のうち重度の障害が残った者には災害弔慰金法に基づき見舞金が支給されたが、その要件は厳しく震災での支給者はわずか「64人」にとどまっていた。これまで行政側は「障害の原因が何であろうと、公的な支援策は同じです」(2004年8月8日 神戸新聞)、「障害を負った場合、ほかの原因の障害と同様、優遇制度の対象になる。震災障害者を区別する必要はない」(2010年8月23日 日本経済新聞夕刊)などとして、国や県、市町による実態把握や支援などは全く行われず、すべては民間ボランティアによる支援活動にとどまっていた。
神戸市は2009年になり初めて本格的な調査を行い、12月に結果を発表した。そして年が明けて震災15年となる2010年1月17日、矢田立郎神戸市長が震災障害者と初めて懇談。今後の調査と支援を約束した。一方、兵庫県でも復興フォローアップ委員会の中間報告の中で「実態把握が必要ではないか」との指摘を受け、調査の検討を始める。そして県と神戸市は2010年8月に合同調査チームを立ち上げ、学識・NPO等専門家のアドバイスを得ながら調査を開始。これにより、震災障害者が328人いることが判明した。
この328人(神戸市調査対象者183人と兵庫県調査対象者145人)の内、連絡の付く人に対して調査を開始し、アンケート票を送付したり直接訪問を行った。[23]。そして2010年末、この中間集計を発表した。
これについて調査に関わった震災障害者等調査アドバイザーは、
震災でなければ普通に救急車で運ばれたのに、病院で治療を受けるまで時間がかかって重症化した人が多いのが震災障害者の特徴。
との印象を語った[24]。これを受けて井戸敏三兵庫県知事は、今後の課題として「住宅耐震化」や「防災福祉コミュニティ」の再確認の必要性に加えて次の点を挙げる(2011年1月5日 朝日新聞)。
身体障害者手帳の申請に至るまでの期間が長い人もいる。情報不足が原因だとすると、どう情報提供していけばいいのかということが課題ではないかと思う。
一方で知事は、すでに震災障害者となった人たちへの支援策には否定的な見方を示した(2011年1月12日 毎日新聞大阪本社兵庫版)。
こういう課題を地域防災計画に位置づけることはあり得るが、障害の原因で救済策が異なるとはなりにくいので、震災障害者向けの救済策を盛り込むことは現時点では難しい。
これまで支援活動を行ってきたNPO法人「よろず相談室」の牧秀一理事長は、この中間集計について「実際の震災障害者は2,000人以上」だとの見方を示した(2010年9月6日 朝日新聞大阪本社兵庫版)。それは今回の調査は「兵庫県内」で障害者手帳を取得した「身体障害者」約32万人中、申請時の書類に理由として「震災」などと記載されている数のみを集計したものに過ぎないからだという。つまり上記にあてはまらない「県外被災者」や身体障害者以外の「精神障害者」「知的障害者」、そして申請書類などに特に震災だと明記していない人たちが調査対象から漏れており、合わせると相当数に上るのではというのが現場の実感で、今回判明した数も「氷山の一角だろう」という[26]。牧理事長は、自身も研究員として参加する「2011復興・減災フォーラム」(関西学院大学災害復興制度研究所主催/2011年1月8日開催)の「震災障害者法制度研究会」の報告でも、
調査対象に入っていない障害者も多い。実数をきちんと把握し、本人や家族が生活の悩みなどを相談できる行政の窓口を設けることが必要だ。
と指摘した(2011年1月9日 朝日新聞大阪本社)。
毎日新聞の取材によると、県と神戸市が把握した以外にも新たに35人が判明し、全国で少なくとも363人いるということが判った。(2011年1月16日 毎日新聞)。
最初の神戸市の調査が明らかになった後の2010年、国会において中井洽防災相は国による調査・支援を行うことを表明。同年12月24日に閣議決定された「平成23年度予算政府案」では、震災障害者への支援を検討する費用が計上された[25]。
兵庫県は2011年5月10日の復興フォローアップ委員会において、震災が直接的な原因の精神・知的障害者が21人いたことを発表した。すでに判明している身体の障害者(328人)と合わせて、震災障害者は計349人となった。[27]。
関連サイト
- 震災障害者法制度研究会 - 関西学院大学災害復興制度研究所
- 平成23年度予算 - 財務省
- 震災障害者及び震災遺児の実態調査にかかる調査票の送付について[2010年11月22日記者発表] - 兵庫県
- 震災障害者及び震災遺児の実態調査について[2010年8月6日記者発表] - 兵庫県[23]
- 知事定例記者会見[2010年1月5日記者発表] - 兵庫県
- [2010年10月13日]最大の二次災害は「忘却」〜震災障がい者(津久井進の弁護士ノート)
- 震災ボランティア「よろず相談室」をNPO法人化へ/オピニオン - 朝日21関西スクエア
関連ラジオ番組
- 2010年10月11日放送分「ネットワーク1.17」第744回『震災障がい者とは?』よろず相談室主宰(神戸市立楠高校教員)牧秀一さん - MBSラジオ:ネットワーク1.17/サイトにて試聴&ポッドキャスト音声配信[26]
関連リンク・論文
- 《報告》震災障害者の今 : 阪神淡路大震災から17年/牧秀一 - 関西学院大学リポジトリ:『災害復興研究 3号(2011年)』PDF
関連新聞記事
- [2012/11/05]阪神大震災/震災障害者、県が一般施策で支援 NPOとの意見交換で表明(毎日新聞大阪本社兵庫版)
- [2012/10/28]震災障害者支援に弾み 兵庫県、申請書類に選択肢追加(神戸新聞)
- [2012/10/28]震災障害者の把握容易に 申請書類に項目追加 兵庫県(神戸新聞)
- [2012/10/08]震災障害者の支援施策実現を 神戸で集い(神戸新聞神戸版)
- [2012/01/09]東日本大震災:宮城など4県、震災障害42人 見舞金6人(毎日新聞)
- [2011/05/11]震災原因の精神・知的障害は21人 阪神・淡路(神戸新聞)[27]
- [2011/01/16]災害障害者:全国に363人 毎日新聞調査(毎日新聞)
- [2011/01/08]県が災害弔慰金法見直し提言へ 震災障害者調査で(神戸新聞)
- [2010/01/08]震災障害者支援に政策提言 関学の研究所が報告へ(神戸新聞)
- [2010/01/08]震災障害者支援、見舞金の要件緩和を 関学研究会が中間報告公表(毎日新聞大阪本社夕刊)
- [2010/12/28]「震災障害者」過半数が失職・休職 6割、相談窓口利用せず(産經新聞大阪本社)
- [2010/12/28]震災障害者3割が失業 兵庫県・神戸市アンケート(神戸新聞)
- [2010/12/28]5割が救出に5時間超 震災障害者 兵庫県・神戸市調査(朝日新聞大阪本社)[24]
- [2010/12/25]震災障害者支援に740万 政府予算案兵庫県関連(神戸新聞)[25]
- [2010/12/21]震災時に設立「よろず相談室」がNPO法人に(神戸新聞神戸版)
- [2010/12/09]阪神大震災:災害障害見舞金、国への要望検討--県議会で知事 /兵庫(毎日新聞大阪本社兵庫版)
- [2010/12/03]阪神大震災で精神・知的障害150人 兵庫県・神戸市調査(産經新聞)
- [2010/12/02]「精神的後遺症」150人 阪神大震災、調査で判明(共同通信)
- [2010/11/23]震災障害者の実態把握へ 県と神戸市が調査票(神戸新聞)
- [2010/10/17]震災障害者の実情と課題は 神戸大でシンポ/「震災15年 残された課題 震災 障がい者」日本災害復興学会神戸大会(神戸新聞)
- [2010/10/13]震災障害者「精神・知的」も調査開始 県と神戸市(神戸新聞)
- [2010/10/09]震災障害者支援考える 神戸大で17日にシンポ(産經新聞)
- [2010/09/01]震災障害者支援調査検討に1200万円 概算要求(神戸新聞)
- [2010/08/10]震災障害者問題、国に対策求める 神戸市長表明 /兵庫(毎日新聞大阪本社兵庫版)
- [2010/08/07]兵庫の震災障害者328人 兵庫県、初発表(毎日新聞大阪本社朝刊)
- [2010/08/06]「震災障害者」328人 県が中間集計発表(神戸新聞)
- [2010/03/30]阪神大震災:震災障害者「ケア遅れている」−−参院特別委で防災担当相 /兵庫 改めて対応の姿勢(毎日新聞大阪本社兵庫版)
- [2010/02/16]「震災障害者」の実態調査 県、神戸市と連携へ(神戸新聞)
- [2010/01/26]震災障害者、他省庁と協力し支援 予算委で防災相(神戸新聞)
- [2010/01/17]震災障害者と矢田市長が初の懇談(神戸新聞)
- [2009/12/25]共に生きる・阪神大震災15年:震災障害者の認識必要 神戸市長が会見 /兵庫 市長「理解十分でなかった」(毎日新聞大阪本社兵庫版)
- [2009/12/23]震災障害者、県も調査へ 専門家ら指摘で方針転換(神戸新聞)
- [2009/12/19]神戸市、震災障害者を追跡調査 初の実態解明へ(神戸新聞)
- [2009/12/19]支援の枠外、尽きぬ疑問 神戸市が震災障害者調査へ(神戸新聞)
- [2009/11/20]震災障害者183人、神戸市が調査(讀賣新聞大阪本社)
- [2009/02/12][記者の目]阪神大震災「震災障害者」の14年=藤原崇志(神戸支局) - まいまいクラブ(毎日新聞)
- [2009/01/16]阪神大震災:震災障害者33人、毎日新聞調査 8割「公的支援不満」「世帯収入減少」6割/「自殺を考えた」4割(毎日新聞大阪本社兵庫版)
- [2008/10/29]語り継ぐ:震災障害者への支援、改善必要──神戸大名誉教授・岩崎信彦さん(毎日新聞東京本社東京朝刊)
- [2007/02/19]震災障害者や家族が集う 体験や悩み語り実情を発信(神戸新聞)
- [2004/08/01〜08/08]1995・1・17から IV 生き直す 震災障害者の10年(神戸新聞)[25]
倒壊家屋閉じこめ者数
東濃地震科学研究所による神戸市内分の推定値[3]。神戸市の震度分布から建物被害を推計し、そこから人的被害、地震直後の建物閉じこめ者数を算出した。
この約22万人という推定値は、神戸市の人口の約15%にもあたる。これまでは一般的には2万人くらいだろうと思われていた中でのこの数字は、仮に神戸市分に阪神や淡路を含む被災地全体分で推計すれば30万人近くに上ると思われる。同論文によると「北淡町での調査結果では閉じこめられた人の割合19%となっていることから、この推定結果は実際の値に近い値を示しているものと思われる」という。
もし日中に起きていたら?
この地震は都市が活動を始める前に発生した。早朝とはいっても日の出までまだ2時間以上もあり真っ暗闇だった。街中に人がおらず鉄道も始発前で、テレビの生放送も1局のみであった。これが例えば12時間遅かった午後5時46分に発生したと過程した場合には、1万人以上という一桁多い犠牲者が出ていたとの予測ができるという。
日中であれば交通機関、電車や地下鉄、新幹線といった鉄道も営業運行されておりこれらの乗降客数だけでも数十万人、国道や高速道路の通行量も数千台に上る。実際には阪神高速や新幹線の高架橋を始め、阪急伊丹駅、三宮駅などのターミナル駅ビルや地下鉄大開駅が倒壊した。この高速道路や鉄道施設への甚大な被害を鑑みると、今回人的被害が鉄道では無く高速道路でも少なかったことは、単なる"偶然"でしかなかった。企業や学校や商店の入るオフィスビルやデパートも各地で倒壊し、道にははがれ落ちた外壁やガラス片が散乱した。当時の阪神地区では揺れでガスの元栓が自動的に締まるシステムを採用していなかったために、家庭や飲食店でのガス使用に伴い火災発生がより多かっただろうとのことである。
関連新聞記事
- [1995/01/21]地震発生が5時46分だったら…倒壊の高架上に車400台/夕刻の雑踏にガラスの雨/電車に最大50-60万人 渋滞道路に逃げ場なく 地下街のパニック心配(讀賣新聞大阪本社朝刊)[16]
応急仮設住宅孤独死者数
"孤独死"とは通称で、「仮設住宅における独居死亡者数」(兵庫県警)のこと[13]。「発見時点で仮設住宅建物内で単独で死亡(変死)」していた警察扱いの例を各報道機関が集計した。
しかし例えば実際に多くあった仮設団地敷地内でも屋外での凍死者の事例や、衰弱して発見され病院で死亡などの例は含まれていない[14]。これらを含めた大学の研究者による独自の集計・分析による数は、これよりも更に1割ほど多いという報告(神戸大学医学部上野易弘助教授の調査「253人」)がある[15][18]。ちなみにこれらの数は、災害弔慰金給付審査の対象には原則として含まれないため、震災関連死者としては認められない。行政による追悼式でも名簿からは外されている[17]。
取材問い合わせ元
- 兵庫県警察本部広報課(1998年2月時点、電話問合せ)[13]
- 神戸市市民局仮設担当生活再建本部(1998年2月時点、電話問合せ)[14]
- 応急仮設住宅 - 内閣府『阪神・淡路大震災教訓情報資料集』[18]
関連新聞記事
- [2012/08/27]震災孤独死 心砕く 仮設に診療所…額田さんお別れ会に300人(讀賣新聞大阪本社兵庫版)
- [2006/01/30]峯本教授、震災後の孤独死検証(朝日新聞大阪本社兵庫版)
- [2004/09/05]取材ノートから 死にたいまでの孤独感があった(神戸新聞)
- [2000/08/05]阪神大震災「孤独死」が昨年4月から43人(毎日新聞)
- [1998/03/28]「仮設」で孤独死200人に 兵庫 震災4年目独居1万4000人 目立つ肝臓疾患 自殺も急増傾向(朝日新聞東京本社朝刊)[15]
- [1998/01/16]名簿に載らない犠牲者たち 孤独死190人 追悼式も対象外(朝日新聞東京本社夕刊)[17]
関連リンク
- 第12回若月賞受賞・額田勲氏記念講演「『孤独死』と『孤立死』のはざまで〜現代社会の異常な死の背景を追う」 - 佐久総合病院
関連論文
- 応急仮設住宅と災害復興公営住宅における孤独死の実態と居住環境に関する研究(住宅の被災・復興と改修,建築経済・住宅問題)/高橋知香子,塩崎賢明,堀田祐三子 - 日本建築学会:『学術講演梗概集. F-1, 都市計画, 建築経済・住宅問題 20050731』CiNii PDF
- 震災死と孤独死の死因分析とその法医学的検討 - 神戸大学:『神戸大学都市安全研究センター研究報告 特別報告2 19981200』CiNii PDF
- 個別研究報告 : 震災死と孤独死の死因分析とその法医学的検討 - 神戸大学:『神戸大学都市安全研究センター研究成果報告会 発表論文集 pp.27-34』CiNii PDF
- 震災前後における神戸市内の独居死の比較検討 - 神戸大学:『神戸大学都市安全研究センター研究報告 2 19980300』CiNii PDF
災害公営復興住宅孤独死者数
独居死亡者数のうち災害公営復興住宅において発見された者。警察や行政の統計上では「変死者」として検視されたものから、一人暮らしの入居者についての死亡状況を各報道機関が調査・集計したもの。
「独居死は95年3月、尼崎市内の仮設住宅で63歳の男性が病死から2日後に発見されたのが最初」(2015/1/10 神戸新聞)だという。
これらはマスコミの独自集計のため、「仮設から復興住宅への転居が進んだ1998、99年は復興住宅での独居死者数のデータがないため、総数はもっと多い可能性が高い」(2015/1/10 神戸新聞)。という指摘もある。
また現状(2015年)の復興住宅は、「入居総数は約2万1000世帯。6割にあたる約1万3000世帯が被災者で、残りは一般の入居者が公営住宅として利用している」(2015/1/9 毎日新聞)ということで、「近年は復興住宅に一般の居住者も住んでおり、独居死とされた人の全てが被災者とは限らない」(2015/1/10 神戸新聞)という見立てもある。
「2014年秋の神戸新聞社の取材では、復興住宅の入居者のうち被災者は約6割。借り上げ復興住宅の20年期限問題では、多くの被災者が一般公営住宅などへの転居を余儀なくされており、復興住宅と一般の住宅との差は、ますます小さくなるとみられる」(2016/1/13 神戸新聞)
関連新聞記事
- 兵庫県内復興住宅 独居死33人,神戸新聞,2016年1月13日
- 独居死発見遅れ、最多186人 15年、神戸市7区,神戸新聞,2016年1月13日
- 独居死20年で1000人超す 阪神・淡路大震災仮設、復興住宅で,神戸新聞,2015年1月10日(864人)
- 阪神大震災:復興公営住宅での孤独死 14年は40人,毎日新聞,2015年1月9日
- 被災者の孤独死 去年40人,NHKニュース,2015年1月9日
- [2012/05/05]住民男性孤独死か 神戸の復興住宅に死後数週間の遺体(神戸新聞)
- [2012/01/14]復興住宅の独居死36人 2011年(神戸新聞)
- [2012/01/14]復興住宅の孤独死、00年以降最低に 阪神の被災者ら(朝日新聞大阪本社)
- [2012/01/14]昨年の孤独死、最少36人 阪神大震災の復興住宅(産經新聞大阪本社)
- [2012/01/14]孤独死、昨年は36人=阪神大震災の復興住宅 兵庫(時事通信)
- [2011/01/14]復興住宅の独居死、昨年は51人 阪神・淡路大震災(神戸新聞)
- [2011/01/14]復興住宅での昨年の孤独死51人 兵庫、43人は病死(共同通信)
- [2010/01/15]復興住宅の独居死62人、8割65歳以上 09年(神戸新聞)
- [2009/01/15]途絶える交流「助けは誰が」 災害復興住宅の独居死(神戸新聞)
- [2009/01/14]復興住宅の独居死46人 「5カ月後発見」も 08年(神戸新聞)
- [2008/01/15]昨年の「孤独死」60人 阪神大震災の復興住宅(産經新聞大阪本社)
- [2008/01/15]復興住宅の独居死60人 65歳以上が9割 07年(神戸新聞)
- [2007/01/13]復興住宅の独居死66人 発見まで3カ月も 06年(神戸新聞)
- [2006/01/17]阪神・淡路大震災11年 伝える、災害の長期的影響(神戸新聞)
- [2006/01/15]大震災、孤独死なお69人──復興住宅で昨年、19日後発見の例も(日本経済新聞大阪本社)
- [2006/01/15]復興住宅独居死69人 05年、見守り進むも横ばい(神戸新聞)
- [2005/01/14]死後1年8カ月で発見「孤独死」続く復興住宅 西宮(神戸新聞)
- [2004/01/10]震災復興住宅の独居死者、4年で251人 大半が孤独死(朝日新聞大阪本社)
- [2002/01/31]兵庫の復興住宅、孤独死47人 見守り制効果で初減少(朝日新聞)
- [2002/01/16]復興住宅の孤独死35人 神戸市営、昨年4-12月(神戸新聞)
県外被災者数
「県外被災者」とは、震災後に兵庫県外に転出し自力で避難所を確保した被災者のこと。この名称のほかにも「市外・県外避難者」「転出被災者」「疎開被災者」「県外居住被災者」「市外・県外被災者」等の名称が同様の意味として使われている。このような人たちの存在や問題点について、行政には当初その認識すらも全くなかった。一方で県外に転出した人という意味において、震災後に県が全都道府県に依頼した公営住宅の空き家住宅の提供に応募した件数の全国「6,160戸」が入居したことは判っていた。
その後、行政はようやくその存在と対応の必要性に気づき概要を探った。当初国勢調査をベースに住民基本台帳などから推計する。しかし住民票の届け出をせず転出入した人も少なくなかったため、電気や水道の契約戸数をもとに試算した(兵庫県,1995年10月)。人口動態からの自然増減を加味しても6万〜10万人辺りか? という推計もあったが、その後も本格的な実態調査は行われなかった。
行政は広報誌の配布や復興公営住宅申し込みを通じて、県外被災者の名簿をいくらか把握したが、その名簿をボランティアは利用できなかったために効果的な支援もなかなか進まなかった。それでも各地に散らばる県外被災者を支援しようと、その先々で支援ボランティアが組織された(下記参照)。
1996年12月、県は県外被災者が戻ってくるための支援対策事業「ふるさとひょうごカムバックプラン」を発表した。
この県外被災者の様々な問題、離散による支援の網からのすり抜けや情報の共有、コミュニケーションの不足などの構図は、2000年に起こった東京都三宅島の雄山噴火に伴う全島避難の時、図らずもそのまま繰り返されることとなった。避難島民は都内各所の都営住宅に分散して避難生活を送ることとなり、各地で地元の支援ボランティアがサポートを行った。
主な県外被災者支援ボランティア団体
- 街づくり支援協会(大阪府・全国)
- 市外・県外避難者ネットワーク りんりん(ネットワーク)
- 県外避難者支援全国ボラネット(ネットワーク)
- 震災県外避難者京都集いの会(京都府、滋賀県、大阪府)
- 阪神大震災子どもを助ける会(京都府、滋賀県、大阪府)
- 被災者連絡協議会(大阪府)
- 生活協同組合コープしが(滋賀県)
- 震災で奈良に移った人の会 ふきのとう(奈良県)
- ソクラテスプロジェクト(神奈川県・関東近郊)
- 神戸YWCA東京支援会(関東近郊)
- 震災ボランティアネットワークいとでんわ(静岡県)
- りんりん愛知(愛知県)
- With You あいち(愛知県)
- おかやま阪神(岡山県)
- 広島のじぎくの会(広島県)
- 石手寺 愛媛県内被災者の会(愛媛県)
- ひまわり会(香川県)
- りんりん福岡(福岡県)
- 結〜ふくおか〜(福岡県近郊)
- りんりん会鹿児島(鹿児島県)
参考文献
- 「地震から七年、被災者・被災地は今—忘れられていないか市外・県外避難者」柴田和子・国場壱子(『大震災を語り継ぐ』神戸大学〈震災研究会〉編,神戸新聞総合出版センター,2002年)
- 田並尚恵「阪神・淡路大震災の県外被災者の今—震災から15年」 - 関西学院大学 災害復興制度研究所:PDF
- 《報告》阪神・淡路大震災の県外被災者の今 : 震災から15年/田並尚恵 - 関西学院大学リポジトリ:『災害復興研究 2号(2010年)』PDF
-
神戸新聞出版センター
参考リンク
- 市外・県外被災者への対応 - 内閣府『阪神・淡路大震災教訓情報資料集』
- ふるさとひょうごカムバックプラン - 兵庫県:PDFファイル
- 会報りんりん - 阪神・淡路大震災 市外・県外避難者ネットワークりんりん:県外被災者支援ボラの会報誌。被災者からのお便り
- 県外居住被災者への支援 - 兵庫県:(2011年現在該当頁は削除)
- 県外避難について - レスキューストックヤード:東日本大震災 支援関連情報
- 県外被災者とは - コトバンク:2008-01-15 朝日新聞 夕刊 1社会
関連ラジオ番組
- 2010年02月08日放送「ネットワーク1.17」第713回『震災15年・県外被災者はいま』川崎医療福祉大学 准教授 田並尚恵さん - MBSラジオ:ネットワーク1.17/サイトにて試聴&ポッドキャスト音声配信
- 平成21年4月6日放送 防災考「人と防災未来センター〜震災の教訓伝える〜」 - NHK神戸放送局
関連リンク - 支援ボランティア
- 特定非営利活動法人 街づくり支援協会:過去の活動として「市外・県外避難者 ネットワーク『りんりん』」。市外・県外避難者調査、会報りんりん
- 神戸YWCA救援センター支援会東京
- 被災者連絡協議会「生き活きふれ愛」
- 阪神震災希望の灯り・愛媛県内被災者の会 - 熊野山虚空蔵院石手寺
関連新聞記事
- [2012/01/17]「阪神」の伝言:大震災17年/3 県外避難 葛藤「逃げ帰るのか」(毎日新聞大阪本社)
- [2012/01/15]阪神・淡路の県外居住被災者 帰郷希望は78人(神戸新聞)
- [2010/01/16]「あの地に戻れてこそ復興」 被災地離れた遺族(神戸新聞)
- [2010/01/15]県外震災被災者半数「帰りたい」 関学大など調査(神戸新聞)
- [2010/01/15]兵庫県、震災被災住民の呼び戻し事業継続へ(日本経済新聞大阪本社)
- [2010/01/13]兵庫県外被災者の帰県連絡制度…知事、継続の意向(讀賣新聞大阪本社)
- [2010/01/13]県外被災者支援を継続 井戸知事(神戸新聞)
- [2010/01/12]震災15年、兵庫に「戻りたい」5割 県外被災者調査(朝日新聞東京本社)
- [2010/01/10]震災15年 県外被災者帰郷遠く 県支援登録が京都6人、滋賀1人(京都新聞)
- [2010/01/03]帰県支援延長を検討 今も99人登録…兵庫(讀賣新聞大阪本社)
- [2010/01/03]特集 阪神大震災15年 阪神大震災 帰県支援…被災者 望郷とあきらめ「定年後でも神戸へ」「もう難しいかも…」(讀賣新聞大阪本社)
- [2009/01/12]県外震災被災者116人 県制度、6割が帰県断念(神戸新聞)
- [2005/3/26]ひょうご便り8年で終了へ 県外被災者へ情報(神戸新聞)
- [2005/3/26]県営住宅募集 県外被災者優先枠を拡大(神戸新聞)
- [2004/12/19〜26]1995・1・17から Ⅵ 軌跡 県外被災者の10年(神戸新聞)
- [2003/01/10]戻りたいけど戻れない 県外被災者372世帯(神戸新聞)
- [2002/01/10]県外被災者「戻りたい」なお448世帯(神戸新聞)
- [1999/07/02]悩みや心の傷語り合う/阪神・淡路大震災被災者/沖縄移住者が交流会(琉球新報)
- [1996/12/20]地域限定の生活復興支援策 県外被災者にも適用 兵庫県 カムバックプラン策定(神戸新聞朝刊)
- [1996/09/16〜10/1]<復興へ>第12部 県外被災者を追う(神戸新聞)
震災孤児・震災遺児
震災によって親を亡くした子どもたちのこと。震災後、従来から病気や災害などの遺児支援をするあしなが育英会がローラー調査を行い判明した[21]。
遺児支援のためには遺児の把握が必要だったが、震災直後の当時、行政や学校は調査する態勢には無かったため同会で調査を行うことを決めた。1995年2月10日より全国から集まった職員や病気・災害遺児大学生ら881人が中心となって「震災遺児捜しローラー調査」を開始。報道発表の名簿より1,718世帯を抽出して訪問調査し、3月16日に記者発表を行った。推計では641人だったが、実際には震災遺児504人を確認。その後判明したものを含めると、現在は573人と発表されている[22]。
2010年8月6日に記者発表された兵庫県・神戸市合同調査チーム「震災障害者及び震災遺児の実態調査」において、県教委が支給する「阪神・淡路大震災遺児等育英会資金」の受給者から算出した震災遺児数(兵庫県内)は「419人 」と発表された[23]。
震災遺児の内訳 (95年3月発表時の570人中)
- 両親を亡くした孤児 : 110人
- 父親を亡くした遺児 : 215人
- 母親を亡くした遺児 : 245人
関連リンク - 心のケアハウス
- 神戸レインボーハウス - あしなが育英会:灘区[22]
- ロータリー子どもの家 in 神戸 - 社会福祉法人 神戸真生塾 地域子ども家庭支援センター:中央区
- 浜風の家:芦屋市。社会福祉法人のぞみ会
- 花と緑の希望王国:兵庫県養父町。自然体験、農村体験
関連文献
- 『震災遺児家庭の震災体験と生活実態—平成7年度調査結果報告』あしなが育英会,1996年:震災文庫(神戸大学附属図書館)。PDF全文
- 『レインボーハウスのこどもたち—阪神・淡路大震災遺児の10年 (るんたBOOKS)』,八木俊介,月刊センター出版部,2004年
- 『黒い虹よ、七色に—今も阪神淡路大震災とたたかう遺児たち』,今関信子・文, 菊池恭子・絵,佼成出版社,2002年
- 『黒い虹—阪神大震災遺児たちの一年』,あしなが育英会,廣済堂出版,1995年
- 震災関連資料収集リスト(図書2)児童福祉:神戸市
関連論文
- 阪神淡路大震災後の幼稚園におけるメンタルヘルス後方支援の実践 - 近畿学校保健学会:第45回近畿学校保健学会 平成10年(1998)。PDFファイルリンク
- 震災が高校生の身体発育に及ぼした影響 - 近畿学校保健学会:第45回近畿学校保健学会 平成10年(1998)。PDFファイルリンク
- 阪神大震災による影響 —— 児童の身心に対して - 近畿学校保健学会:第44回近畿学校保健学会 平成9年(1997)。PDFファイルリンク
- 兵庫県南部地震被災による女子生徒の健康諸問題に関する研究 - 近畿学校保健学会:第42回近畿学校保健学会 平成7年(1995)。PDFファイルリンク
- 阪神淡路大震災が子どもたちの精神保健に及ぼす影響 - 神戸市看護大学:『神戸市看護大学紀要Vol.6(20020331)』CiNii PDFでダウンロード
- 研究成果報告書 阪神淡路大震災後の小中学生の精神保健に関する研究(平成11年度神戸市看護大学共同研究費研究実績報告書) - 神戸市看護大学部:『神戸市看護大学部紀要Vol.4(20000331)』CiNii PDFでダウンロード
- 阪神淡路大震災9年後の子どもたちの心身の健康状況に関する研究 - 神戸大学:『神戸大学都市安全研究センター研究報告Vol.9(20050300)』CiNii PDFでダウンロード
- 阪神淡路大震災における「復興」ストーリーと震災遺児家庭/阿部 俊彦 - 東海学院大学・東海女子短期大学:『東海女子大学紀要Vol.25(20060331)』CiNii PDFでダウンロード
- 大学生の心身症状の経時的変化 : 阪神大震災5年4ヶ月後における調査 - 日本教育心理学会:『日本教育心理学会総会発表論文集No.43(20010720)』CiNii PDFでダウンロード
- 阪神淡路大震災が児童・生徒に及ぼした心理的影響 : 震災3年後の調査から(PTSD等) - 日本心身医学会:『心身医学Vol.40, No.supplement(20000610)』CiNii PDFでダウンロード
- 被災地における児童生徒の心の健康に関する調査研究結果 - 文部科学省:報道発表 1996/05 調査研究の概要
関連新聞記事
- [2010/12/28]「専門的心のケア必要」 震災遺児アンケート(神戸新聞)
- [2010/01/13]<語る理由 5>遺児、言葉の重みかみしめ(讀賣新聞大阪本社)
- [2010/01/11]つらかったけど一人じゃなかった…震災遺児8人が作文集、感謝と苦悩つづる レインボーハウス、学校や希望者に配布(讀賣新聞大阪本社)
- [2010/01/09]震災遺児15年の成長、作品集に レインボーハウス(神戸新聞)
- [2010/01/08]「命の大切さ知って」阪神大震災の遺児が被災時の文集発行へ(産經新聞)
- [2010/01/04]兵庫県、震災遺児の歩み把握へ 10年度から(神戸新聞)
- [2009/01/09]遺児支援の輪、拡大 神戸レインボーハウス10年(神戸新聞)
- [2007/01/15]父母思い 懸命に生きた 遺児ら13回忌で偲ぶ(神戸新聞)
- [2006/01/16]レインボーハウス遺児ら亡き父母らに手紙(神戸新聞)
- [2005/01/07]震災遺児の言葉を記録 レインボーハウス八木さん(神戸新聞)
- [2005/1/1〜05/1/15]1995・1・17から VII 生きる 震災遺児の10年(神戸新聞)