阪神・淡路大震災で失われたモノ、残されたモノ、生まれたモノ…そんな記憶を記録します。

青池 憲司 監督作品 映画『宮城からの報告—こども・学校・地域』製作委員会

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青池憲司コラムさまざまな震後2013

第4回「地蔵講と土地区画整理事業」

text by 青池憲司

2014.8.30  up

やっと緒に就いた復興

2014夏 (石巻)
ロケ風景 (宮城県石巻市 2014年8月23日)

今回の撮影目的の一つは、門脇町2丁目3丁目4丁目の住民さんの「地蔵講」でした。震災前からの由緒のある地域の法会です。ことしは60人ほどの方が集りましたが、いまこの地に居住するのは、2丁目と4丁目で22世帯、3丁目は1世帯のみです。多くの人は、被災後の避難先(仮設住宅やみなし仮設)での暮しがまだつづいています。門脇・南浜地区の原野状態にはすこしずつ変化の兆しが見えてきました(28日に土地区画整理事業の工事安全祈願祭が行われた)。

新門脇地区と呼ばれる区画整理事業エリア(門脇町2丁目〜5丁目)の面積は約23.7ヘクタールで、そのうち宅地は14.6ヘクタール。お寺さん(西光寺、稱法寺)と墓地は現状のままです。工事の概要は以下のようになります。宅地は2〜3メートル程度に盛土して整備し、東側の一部地域は来年秋ごろに完成する予定。復興公営住宅は2か所で計150戸を建設する。地区の東西を走る八間道路(南光門脇線)は、高盛土道路として3.5メートル以上に盛土し、幅37.5メートルで整備する。災害発生時の避難ルートとして、高台につづく階段や通路を設ける。石巻市の既成市街地では初めての土地区画整理事業です。

今回のロケでは、10人の住民さんにインタヴューしました。うち2人は3丁目に住んでいた方で、高盛土道路(八間道路)の建設で土地を売却せざるをえなくなり、この地にもどることを断念しました。居住可区域と居住不可区域の分断。居住可区域でも帰る人、帰らない人、帰りたくても叶わない人。やっと緒に就いた復興工事は進行し街区はつくられていきますが、コミュニティの形成はどのようになされるのか。住民さんの思いを聴く撮影行はつづきます。

#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。

青池憲司

ドキュメンタリー映画監督。震災後、親交のあった長田区の野田北部・鷹取地区に入る。"野田北部を記録する会"を組織し5年間に渡りまちと住民の再生の日々を映像で記録。
「記憶のための連作『野田北部・鷹取の人びと』全14部」(1995年〜99年,山形国際ドキュメンタリー映画祭正式招待作品)を発表、国内外で上映。2002年「日本建築学会文化賞」受賞。

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