◉震災発レポート
フリーフリーマーケット
〜長田ボランティア救援物資放出企画〜
長田区細田町・新湊川公園 ◉ 1995年2月19日
Photos by kin
2011.1 up
救援物資の放出イベント
1995年当時、神戸市長田区内には県外から支援のために十数にもおよぶ民間の団体救援に入り、それぞれが組織だった活動を行っていた。この長田区内でのボランティア活動が他の区や市の被災地においての活動と異なる特徴の一つとして、各団体代表者による「リーダー・ミーティング」というものが行われていたことがある。
長田区内の各団体は毎日夕方4時頃に長田区役所内に集まり、「リーダー・ミーティング」という話し合いを行っていた。そこでそれぞれの団体が活動の中で新たに受けたニーズを他団体に振り分けたり、新たな活動を行うための人員や物資の融通、情報交換を行っていた。
そうした状況中、それぞれの団体が集めて持ち運んできた救援物資の余剰分を、まとめて放出しようと企画されたのが、この「フリーフリーマーケット」である。ライフラインが整ってくる中で当初は必要とされていた物資もニーズが減り、商店も再開する中で優先順位として低くなってきた物資が、各団体ともにだぶついていたという共通の事情があった。
青空の下、多くの人が集まった。
会場は日頃ボランティアたちが活動の拠点としてテント村を形成し食事や寝泊まりしていた、区役所の南側に位置する新湊川公園である。起きてから食事を済ますと、テントを公園の隅まで移動した。このイベントの告知期間は各団体や生活ミニコミ紙『デイリーニーズ』などを通じての1日くらいしかなかったが、当日は朝から多くの人が集まって列をなしていた。
準備が整うと正午から入場を開始する。配布はもちろんタダであるが、ルールとして一人で抱えて持ち帰られるだけという量の制限と、一回に100人くらいずつ10分くらいの時間でという入場制限を設けた。
衣類や下着はデザインやサイズのこともありなかなか出なかったが、ジャンパーやコートなどの上着類はダンボールの箱を空けるそばから次々となくなっていくなど人気が高い。物資倉庫ではなかなかニーズのなかった老眼鏡も以外と手にとる人が多かった。また哲学や政治の小難しい文庫本や、『コボちゃん』のマンガ(全て同じ巻数)などを並べていたが意外と出ていない。避難所からの要望では本などの読み物、とくにミステリー小説が読みたいという声がいくつも寄席られていたので期待もしていたが、そのマッチングが少しずれていたようだった。
一画には喫茶コーナーやカラオケコーナー、託児所コーナーも設けられている。しかし短い制限時間内では物資を探すことが優先でそちらに懸命なので、カラオケを愉しもうという人はおらず、近所の子ども達が無邪気に歌謡曲を歌っていた。午後には中央区の中華街・南京町からやってきた獅子舞の披露もあり、被災者同士でお互いにエールを交換する。
午後4時の終了までには物資もだいぶ減り、人々の波は途切れることなく続いた。こうして好評のうちに幕を閉じた。
岩波書店
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◉データ
フリーフリーマーケット
開催日:1995年2月19日
場所:新湊川公園(長田区細田町)