◉震災発レポート
震災ウォーキング ❷
情報リテラシーも必要に
東京都千代田区〜埼玉県和光市 ◉ 2008年9月23日
2008年首都圏統一帰宅困難者対応訓練
text by kin
2010.7 up
池袋のど真ん中で炊き出しを堪能
中池袋公園には花見のようにたくさんのブルーシートが広げられ、すでに多くの参加者が休息していた。ここは日比谷公園からは9kmくらいの地点だ。マッサージの大きなテントや炊き出しのテントなどもある。池袋駅から5分程度の場所にありながらも、ちょうど豊島区役所の裏でサンシャインの麓という隠れたスポットだった。今までこんな所に公園があることを知らなかったが、いろいろな街でこうした公園の場所を覚えておくのも一つの保険かもしれない。
炊き出しの列に並び、支援物資をゲットする。インスタントみそ汁とアルファ米の五目ご飯、缶詰2個とお茶という構成。シートの上でゆっくりと昼食をとった。靴を脱いで座って休めるということは、ことのほかリラックスできる。ブルーシート1枚敷いているだけなのだが、これが結構なポイントであることに、座ってみて初めて気がついた。
出発時には快晴だった空にも雲が広がってきていた。現在の気温は28℃。それでも陰ってきてからいくぶん楽にはなった。ちょうどターミナル駅の近くということもあり、小さい子ども連れの親子の参加者などここで離脱する人たちもちらほら見受けられる。
街道に入る
30分ほど休んで出発。明治通りの六差路を通り線路を超え、いよいよ山手線の円の外を出た。延々長野県松本市まで続く国道254号線、通称川越街道に入る。再び日差しが強くなってきたので、なるべく日陰の多い所を選んで歩く。この川越街道は交通量も多いが、歩道はそれほど広いわけでもない。自転車が通るとさらに狭くなる感じだ。所々に立てられている標識にあるように、震災時にはこうした街道は緊急車両を除いて通行止めになる。一般車はキーを付けたまま車を端に寄せ、乗り捨てなければならない。その場合でも緊急車両のために車道を空けるので、歩道には人が殺到するだろうとの想像が簡単につく。
池袋から50分あまり歩いた。大山のハッピーロード商店街を越えたところに、次のエイドステーションがあった。街道沿いにある「やよい防災ひろば」というポケットパークだ。この公園は、その名もズバリ防災という名の付いただけあって、トイレもあるし井戸もある。またカマドとして使えるベンチや、防火水槽、防災倉庫があり、さらにはガソリンスタンドにも隣接しているというまさに小さいながらも防災拠点としては最適な場所で、ここまで整っている公園などは初めて見た。お茶とビスケットをもらい、ベンチに座って一休みする。靴下まで脱いで足に出来たまめに絆創膏を貼り、気持ちを立て直す。
こうして昔の一里塚のように3〜4km、時間にして1時間に1回くらいの間隔で休めるのはちょうどいいペースかもしれない。実際の感覚的は「もう休みか」と思うくらいなのだが、このようにチェックポイント的に意識して休んでいくことも結構なポイントなのかもしれない。ただしいくら自治体の防災計画で決められているとはいえ、実際の災害時にも沿道の人たちが、自らも被災しながらこうしたエイドステーションを設置できるかどうかは、疑問ではあるが。これはあくまで「理想」とする指針なのか、それとも現実的に構想しているものなのだろうか。
メールの誤配。情報へのリテラシーも
環七を越えて、てくてく歩き出すが、ついに暑さの中の誘惑に負けて衝動的にコンビニに入り、"ガリガリ君"を買ってしまった。外で食べるガリガリ君はとても美味い。コンビニはオアシスのようで、現実的なエイドステーションだろう。しかし神戸での事例を考えると、被災当日の緊急時に機能するのはほんの数時間くらいだろうが。
単調な街道沿いを30分ほど歩き、NTT北町営業所エイドステーションに到着した。前のASから近いためにパスする人も多かったが、一応チェックポイントとして立ち寄りあめ玉を貰った。実はこのエイドステーションは、メール配信の情報の中では「道の左側」とあったので、左側を気にして歩いていたのだが、実際は逆で「道の右側」にあった。メールをよく見てみるとそのほかの情報も誤りで、どうやらよく確認しないままテンプレートのまま送信したようであった。信頼できると判断した情報源であっても、最後は自らもある程度のリテラシーを持って判断しなければならないということを、改めて考える教訓になった。また情報配信の側にも、情報の裏取りや複数の校正/校閲チェックの重要性は改めて求められるだろう。
水餃子スープと牛乳とチョコバナナで終了
環八を超えて陸上自衛隊練馬駐屯地も過ぎると、再び単調な街並みに戻った。通りの風景が代わり映えしないことが、徐々にきつくなってくる。時間の割に距離も稼げず、進んでいる実感がなかなかつかめない。地図や道路標識を頼りに、自分の中で距離感を更新していくしかないのだ。成増駅の付近を通過し都県の境界線をまたがる谷間を越えて、いよいよ埼玉県に入った。道路標識によると池袋から10kmの地点とある。ここで街道と別れ、理研の研究施設に挟まれた道を往く。こうした経路のポイント部分には、東災ボのスタッフの人が立って促してくれるので、イベント的には心強い。
この和光市の辺りは昔はキャンプ・ドレイク呼ばれた米軍基地のあった場所で、ベトナム戦争に関わっていた。今でもAFN(米軍放送)の大きな送信用アンテナが残り、フェンスで囲まれた広大な敷地と共にその面影と存在感を見せつけている。実はこのAFNも、東京都の防災計画の中では、外国人向けの災害情報を提供するという協定が結ばれていた。この米軍脇を抜けたところに、ゴールの県営和光樹林公園が見えてきた。
午後4時、公園に到着しゴールとなった。公園は今日も何かのイベントがあったようで大勢の人で賑わっている。広くてアップダウンのあるその名の通り森のような公園である。地図で見ると埼玉県の朝霞市と和光市、東京の練馬と板橋といういろいろな境界と隣接している場所だ。ブルーシートの上に座り、「キャンパー」という災害系炊き出しNPO団体の用意してくれた水餃子スープと、牛乳とチョコバナナを貰って一息ついた。体にしみ込んいく。全行程21.2kmを踏破した。
[了]
#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。
◉データ
2008年首都圏統一帰宅困難者対応訓練
開催日:2008年9月23日
場所:東京都千代田区-日比谷公園~(川越街道経由)〜
埼玉県和光市-県営和光樹林公園(約23km)他、計4都県5コース
主催:2008年首都圏統一帰宅困難者対応訓練実行委員会
主管:東京災害ボランティアネットワーク
内容:徒歩帰宅訓練/エイドステーション設置訓練/情報発信訓練
徒歩帰宅スタート人数:3,493人
徒歩帰宅最終ゴール人数:2,874人
沿道で参加者への支援人数:1,287人
全参加者数:4,780人
参加ガソリンスタンド78箇所
- 東京災害ボランティアネットワーク
- 2008年首都圏統一帰宅困難者対応訓練
- 首都直下地震による東京の被害想定(最終報告)の公表について - 東京都総務局
- わが家の対策 - 帰宅困難者 - 東京都防災ホームページ
- 帰宅困難者支援場所の指定について - 千代田区防災ホームページ
- 特定非営利活動法人 キャンパー
- 災害時サポートステーション - 東京都石油業協同組合
- カウパレード東京丸の内2008
- 真言宗豊山派 大本山 護国寺
- 一般国道254号 東京国道事務所
⡷⡷関連記事
- ▶雨と太陽、日光街道を災害ウォーク!❷ 〜2010年帰宅困難者対応訓練/東京都千代田区〜埼玉県草加市 [2010年9月25日]
- ▶雨と太陽、日光街道を災害ウォーク!❶ 〜2010年帰宅困難者対応訓練/東京都千代田区〜埼玉県草加市 [2010年9月25日]
- ▷災害時の帰宅をシミュレーション❸ ついにゴール〜帰宅困難者対応訓練/東京都千代田区〜千葉県市川市 [2004年8月29日]
- ▷災害時の帰宅をシミュレーション❷ エイドステーションに到着〜帰宅困難者対応訓練/東京都千代田区〜千葉県市川市 [2004年8月29日]
- ▷災害時の帰宅をシミュレーション❶ 雨の都心をウォーキング〜帰宅困難者対応訓練/東京都千代田区〜千葉県市川市 [2004年8月29日]