◉震災発レポート
鎮魂のかまくら 秋田から尼崎へ
尼崎市・橘公園 ◉ 2010年1月16日
阪神大震災1.17メモリアル市民のつどい2010 鎮魂の祈り
text by kin
2011.1 up
鎮魂のかまくら
15年目を迎える前夜の16日夕方、大阪と接する尼崎に鎮魂のかまくらが作られた。場所はJR立花駅から少し離れた尼崎市役所に隣接している橘公園。ここに以前より交流の続いている日本海側の兵庫県香美町(かみちょう)より、トラックで30トンもの雪が運び込まれた。これをかまくらで町おこしをしている本場の秋田県横手市が運営する「ふれあいセンターかまくら館」からやって来たというかまくら職人たちが、地元の子どもたちと一緒に、かまくらを作り上げた。
到着したのは午後6時過ぎだったため、すでに尼崎市長などによる献灯式は終了していたが、公園にはまだ多くの人が集っていた。高さ3メートルもある大きなかまくらを前に、子どもたちがバケツで作ったという小さなかまくらがたくさん並んでいる。小さなかまくらは49個あり、これは震災で亡くなった市民の数だけ作られているのだという。その内側からは、灯されたろうそくが淡い光を放っている。すっかり日の暮れた公園の中では雪に淡く反射し、その光景は冷厳ながらも美しい。
雪からは縁遠い地域だけに、集まった子ども達も雪の上ではしゃぎまわって愉しそうだ。かまくらの隙間をぬって滑って遊んでいる。一方で傍らにいた親子連れが、子どもにこのかまくらの意を説いている姿もある。そのはしゃぎ回る子ども達を取材で残っていた新聞社や通信社の記者が呼び止め、彼らをモデルにして数カ所で新聞掲載用の写真撮影が始まった。かまくらを前に手を合わせてひざまずくなど演出指導も細かい。それに素直に従う子どもの姿がほほえましく健気で、最後には撮ってくれてありがとうと礼儀正しく挨拶までしていた。載るかどうかわからないよと、それに記者は笑って応えていたが、翌17日震災から15年目の朝刊数紙の一面を、この時の写真が飾っていた。撮影後に各社の取材記者たちはその場でモバイラーとなって写真送稿に取り掛かっていたが、どうやらそれも報われたようだった。
阪神間の冬の夜は、六甲おろしが吹き下ろし体感的にもとても冷たい。この雪も翌日までは充分に持ちそうだ。
[了]
#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。
◉データ
阪神大震災1.17メモリアル市民のつどい2010 鎮魂の祈り
開催日:2010年1月16日
場所:橘公園(尼崎市)
主催:尼崎琴の浦ライオンズクラブ
後援:尼崎市・尼崎市教育委員会
協力:秋田県横手市、兵庫県香美町