◉震災発レポート
雨と太陽、日光街道を災害ウォーク!
帰宅困難者対応訓練 ②
東京都千代田区〜埼玉県草加市 ◉ 2010年9月25日
2010年首都圏統一帰宅困難者対応訓練
text by kin
2011.1 up
河川敷で炊き出しの昼食
角かどに立って案内をしているASサポートスタッフの方に疲れた声で挨拶をし、誘導に従って列に並ぶ。炊き出しの一式を頂いて、ブルーシートの上に腰を下ろした。靴を脱いでゆっくり休めるのはありがたい。しかし今日は風が強く、ブルーシートの重しにしている箱も飛ばされてシートもぱさぱさと音を立てて動いてなかなか落ち着かない。ついでに時折埃も舞い、食べ物の中に入らないように慌てて手でふさぐ。13時10分の気温は21.7度、最大瞬間風速8.8m/s(東京練馬観測値)。雨が止んで良い天気であっても、風が強いということもけっこうなキツさになってくるということがわかってきた。
炊き出しでもらった缶詰ポテトサラダはフリーズドライで、お湯を戻して作るものだが結構いける。とろみのついた豚汁のようなものもとても美味しい。アルミパックのアルファ米は、中にプラスプーンが入っていて細かいところに機転が利いている。パックは深さがあるのでこのままだと食べにくいので、空いた汁のカップ容器に盛りつけて食べた。
食事の後は、ようやくゆっくりと休憩できたのでスタート時にもらった案内にあった携帯メールの配信登録作業をした。
13時17分、河川敷ASを出発して土手の外にある巨大な建物「生涯学習総合施設(学びピア21)」に入りトイレに行く。ここは足立区の生涯学習センターを中心に中央図書館、放送大学、荒川ビジターセンター、集合住宅などが併設された立派な施設だった。エントランスからは遠く建設中の東京スカイツリーが望める。この日のツリーの高さを後から調べてみると、上海テレビ塔を越えたという470mだった。
気温が上昇、突き刺さるような太陽
荒川に架かる長い千住新橋を渡り、さらに足立区を先に進む。相変わらず日光街道は大きな道で直線が続く。こうなると道沿いの風景には変化が見られず単調な風景延々と続いていく。変化がないというのは中々は辛いものだ。
日差し強くなってきたので手ぬぐいを頭からかぶり帽子代わりにした。ちょっと帽子を被ってサングラスを掛けたいくらいの、痛いくらいの日光が降り注ぐ。さっきまで秋の涼しさかと思っていたが、もう真夏の勢いである。
14時18分、保木間公園ASに到着。後から配信されたメール情報によると「AS:5 足立区役所 開設」とあったが、通過した大きな区役所近辺には特に人も案内もなかった。ほんとうに開設されていたのだろうか? 公園のトイレに行った後、お茶を貰う。粉茶のような感じで底にお茶が溜まっていて抹茶ちっくでなかなかいける。14時の気温は22.3度(越谷観測値)。さすがに暑くなってきたので、とうとうウィンドブレーカー代わりに着ていたレインコートを脱いで、Tシャツ姿になった。
埼玉突入、ゴールも目前
14時50分、埼玉県に入る。ゴールとなる草加市だ。県内に入ると車道も1車線になり歩道も狭くなってきた。主要街道にしては狭すぎるくらいだ。この辺りからは東武伊勢崎線と近い距離で平行に走るようだ。そうこうしていると富士浅間神社ASに到着した。浅間神社は本殿は小さいが、裏の境内はちょっとした広さがある。奥には富士山を模した「富士塚」もあり、郷土資料歩きの一団がガイドさんと一緒に町歩きをしていた。歴史のある神社のようだ。ここのようなある程度の大きさのある神社は、トイレも水も広場もあるし、火災に強い銀杏の木もあるし、木に囲まれている。昔から祭りを行ったり人々が集うある種のアジールであったが、現代でもこうした役割は求められ、貴重な存在だと改めて認識する。神社のトイレに行った後、ASで空になったペットボトルいっぱいに給水して貰う。張り紙によるとゴールまであと3,4キロ程度とのこと。
谷塚駅から草加駅の間くらいの距離の街道沿いは、草加せんべい店が多く建ち並んでいた。草加駅入口を1km弱進むと、歩道は綾瀬川沿いに松並木が整備された広い遊歩道のようになっていた。「草加の松原」とも呼ばれるらしい。日光街道草加宿の趣きを醸し出している。道を渡る歩道橋もアーチ型だ。松並木の遊歩道は散策や犬の散歩、ジョギングする人など近所の人たちでけっこう賑わっている。この遊歩道を進んだところがゴールの「草加市立綾瀬川左岸広場」だった。
そしてゴール
15時55分、橋を渡り対岸の綾瀬川左岸広場に着いた。最初に市の関係の方から草加せんべいを貰う。ゼッケンを渡し、訓練修了証などを受け取る。シートの上に座り、パルシステム生協のヨーグルトを食べて一息ついた。この公園は広く整備されていた。イベントをやるにしても祭りをやるにしても、このような場所が近くにあればと思う。
会場の隅には、草加消防署からはしご車やレスキュー車、ポンプ車などが出動して搭載品を並べ、展示紹介していた。レスキュー車を近くで見ると、えらい何から何まで様々な道具が装備されていることがわかる。救急車も普通のワゴン車よりも車高が高く、内部でも立った状態で作業ができることがわかる。
今回で参加は5回目だった。10kmを越えたころから足裏が痛くなってきたが、ゴールしてみると全体の疲労感はあるが意外と筋肉の痛みは少ない。ただ歩くのならやはりこの20kmくらいが、いろいろな判断も含めて妥当だろうなと思う。ただ歩くペースはこれよりもゆっくりと歩きたいので、1時間くらいは余計に掛かるかもしれない。この訓練では体力のある人が多いのか健脚が多いのか、先頭のペースはとても早い。本当にASに立ち寄って休んでいるのだろうかとも思うくらいだ。オリエンテーリングのようにASでポイントチェックをしていくだけでも、けっこう時間は取られると思うのだが。
今回のように天候が変化したことはなかった。スタート時は気温が16度でゴール時は22度、雨が降り次第に晴れて日差しも強くなった。これだけでも雨具が必要だったり日よけが必要だったり、衣服も着たり脱いだりといろいろと準備や調整が求められる。雨の時は屋内の椅子にしか座って休めなかったが、晴れてくると外のベンチにも座ることができた。ところが風が強くなると向かい風では歩くのがきつくなったり、河川敷では食事中にほこりが舞ったりもした。
5回目の参加でも、また新たな発見をすることができた。(日光街道沿いは、松屋が多いこともわかった。)
[了]
追記:ところで配信メールは、必要なのか?
今回配信されたメールを抜き出してみる。
こちらは帰宅困難者対応訓練 情報本部です。
13:42現在の情報です。
◆全体状況
13:35 先頭、保木間公園AS出発
13:41 しんがり、虹の広場AS到着
◆エイドステーション開設状況
AS:4虹の広場 開設
AS:5足立区役所 開設
AS:6保木間公園 開設
AS:7草加浅間神社 情報なし
AS:8草加市立綾瀬川左岸広場 情報なし
◆沿道協力ガソリンスタンド情報
情報なし
情報本部では徒歩訓練の参加状況や周辺状況の写真・報告を募集しています。可能な方はぜひ(略)宛に情報提供をお願いします。なお、道路での移動中は横に広がらないようにお願いします。
正直、これは誰が誰に向けて発信しているのかが曖昧な情報と言える。サポートスタッフ間での情報交換用だろうか。「しんがり(最後尾)」というように日常使われない古い単語を選ぶのもどうかと思うが。配信される情報と求められる情報がかみ合っていないのではないだろうか。
「エイドステーション開設状況」もそのAS名はスタッフ向けのものと言え、場所を知らされていない参加者には、一般的なランドマークの名称や住所などでないとその設置場所すらわからず、距離感の想像もできない。欲しかった情報は、交通、道路状況、地理、天候、被災状況(今回は別だが)、トイレ、給水などで、こうした情報を得ることで不安を解消したりしたいところだ。しかしこうした情報は実際には、ASに到着してみないと得られなかった。実際に行ってみないとわからないのであれば、こうして事前の収集にエネルギーを注がず、他の手法で探したい。現実的にはラジオや、さらに今後はTwitterなどのSNSでリアルタイム情報の収集と共有をしていくのだろう…な。
[追記・了]
#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。
◉データ
2010年首都圏統一帰宅困難者対応訓練
開催日:2010年9月25日(土) 雨のち晴れ
コース:東京都千代田区-日比谷公園〜
A)千葉コース:〜千葉県市川市広尾防災公園
B)埼玉コース:〜日光街道経由〜埼玉県草加市綾瀬川左岸広場
B1)埼玉県内コース:埼玉県庁〜草加市綾瀬川左岸広場
C)東京コース:〜甲州街道.青梅街道〜武蔵野市武蔵野中央公園
D)神奈川コース:〜国道15号線経由〜神奈川県川崎市稲毛公園
E)神奈川県内(10/2):川崎.横浜コース(川崎市〜横浜市)
F)神奈川県内(10/2):藤沢.茅ヶ崎.平塚コース(藤沢市〜平塚市)
主催:2010年首都圏統一帰宅困難者対応訓練実行委員会
主管:東京災害ボランティアネットワーク
内容:徒歩帰宅訓練/エイドステーション設置訓練/情報発信訓練
- 2010年首都圏統一帰宅困難者対応訓練
- 東京災害ボランティアネットワーク
- 首都圏一斉帰宅徒歩訓練:on Twitter 本部用アカウント
- 平成22年度 徒歩帰宅訓練 実施します!!! - 埼玉県:危機管理防災部
- わが家の対策 - 帰宅困難者 - 東京都防災ホームページ
- 帰宅困難者対策〜「むやみに移動を開始しない」が基本です〜 - 埼玉県
- 帰宅困難者支援場所の指定について - 千代田区防災ホームページ
- 帰宅支援 - 防災首都圏ネット:九都県市首脳会議 防災・危機管理対策委員会
- [2010/09/30]〈東災ボ〉「2010首都圏統一帰宅困難者対応訓練」を実施(防災情報新聞)
- [2010/09/28]徒歩20キロ 消耗の大きさ実感 日比谷公園→草加の広場 帰宅困難者対応訓練 震災時の難所 再確認(讀賣新聞東京本社埼玉版)
- [2010/09/25]日比谷公園「帰宅困難者」の体験訓練(TOKYO MX NEWS)
- [2010/09/24]フードバンク:食品捨てずに被災者へ 東京のNPOが活用、あす訓練で提供(毎日新聞東京本社東京夕刊)
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