青池憲司コラム
石巻撮影報告・8/1
“まちば”の風に吹かれて
宮城県石巻市 ◉ 2011年8月1日
東日本大震災
text by 青池憲司
2011.8.2 up
夏休みの石巻
石巻の小学校は、7月20日が終業式でした。夏休みの間は、撮影隊も門脇小学校を離れます。でも、大郷町の宿舎から石巻へかよい、まち歩きをしています。ぶらぶらしているだけですが、「石巻の風情」を身に纏いたいからです。
これまで閉まっていた喫茶店や食堂などの個店が開いていると、つい入ってしまいます。地元の人たちと店主の世間話(多くはあの日と、あの日以後の身の片々です)を聞いていると、その、ゆるーい石巻弁のやりとりに、ヨソモノながら安堵を覚えます。
門小のこどもが親子連れでいるところに出くわしたりします。そんなとき、児童が親にわたしたちを紹介してくれます。スタッフにとって、うれしいひとときです。
古いコヤへ
"まちぶら"をしていて、「石巻日活パールシネマ」という映画館に行き着きました。Old Fashionのコヤです。シネコン嫌いのわたしとしては大いに気に入りました。
昭和30年から営業しているとのことで、津波にやられたが、いまは再開しています。日活映画全盛時代のこんな幟も立っていました。もちろん、その当時のモノです。
いまはピンク映画専門館として1年365日休みなしだそうです。高齢の館主ひとりが、映写もモギリも何もかもこなしています。わたしと同年代の館主に、折りをみて、キャメラとマイクで、話をきこうと思っています。
「川開き」に向けて
夜になって、倒壊家屋がまだ残るまちなかで、野外映画上映会が行われました。「ドラえもん」の最新作です。親子連れが詰めかけました。
ビルのヒビ割れ外壁のスクリーンに歓声をあげるこどもたちの声をききながら、隣の仮設バーでは、おとなたちがベルギー・ビールを飲んでいます。非日常のなかに、あらまほしき日常の欠片が現出しました。
「まち」がうごいています。前回の報告でもおつたえしたように、市内の50町丁の住民さんと市行政の、復興プラン「意見交換会」がありました。それとはべつに、中心市街地の商店主や住民さんが自主的な学習会を開いて、震災前とは異なる「まちづくり」に取り組んでいます。
野外上映会は、「ISHINOMAKI 2.0」というグループが企画した「STAND UP WEEK」という週間イベントの一つです。
8月1日の旧北上川の「川開き」に向けて、その1週間前の連日連夜を、新しいアイディアの店やシンポジウム、ライヴステージなどを開いて、みんなでたのしもう、というものです。
ひさしぶりに"まちば"の風に吹かれて、ここちよい一日でした。
#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。