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◉震災発コラム

災害ボラセンのボランティア募集
地域限定条項は必要か?

2014年2月19日
2/8、2/14関東豪雪

text by kin

2014.2.19  up
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募集は「市内在住者のみ」のふしぎ

全国社会福祉協議会(全社協)の災害ボランティアブログに、今回(2014年2月)の関東の豪雪災害に関する災害ボランティア・センター(ボラセン)設置状況と募集の状況がまとめられています。

リンク:被災地支援・災害ボランティア情報 - 全社協

現在(2014年2月19日)募集されているのは山梨県の各市、埼玉・秩父、群馬・前橋。しかしこの中で募集要項に「募集地域」の制限を特に設けていないのは前橋だけです。

【ボランティア募集の対象】特に制限はございませんが(略):前橋市大雪たすけあいセンター - 群馬県前橋市(2014年2月19日閲覧)

他の地域では、どこも県内や市内など現地や近隣在住であることの居住地の条件があります。

ボランティアの募集について ※現在の交通事情を勘案し秩父市内在住の方、秩父市近隣にお住いの方のみ募集しています。:秩父市社会福祉協議会 - 埼玉県秩父市(2014年2月19日閲覧)
募集ボランティア (1)山梨県内に在住の方:甲州市災害ボランティアセンター - 山梨県甲州市(2014年2月19日閲覧)

ボラセンを立ち上げ運営にあたる社協が、なぜ災害ボランティアの募集際してこのように条件を付けるか? いつ頃から付帯されるようになった文言なのでしょうか。

はっきりとした理由を客観的に考えようとしてみても、よくわからないというのが実のところです。果たして被災地の支援を被災地内の人たちだけで完結できるものなのでしょうか。

その要項が付帯されたそれぞれの被災地の状況を追っていても、知り合いの災害ボランティア研究者や仲間の社協職員に尋ねてみてもそこに合理的な答えは見えてきません。

この地域限定の募集とは、理由なきままにその後の東日本大震災でも繰り返され、未だにこうして続いてしまっています。

秩父市社協は「交通事情を勘案し」と理由を明記していますが、それと時を同じくした前橋社協では「市内の道路網は十分機能していないのが実情です」と"勘案"しながらも、

雪道でも安全移動できる方でしたら歓迎いたします。:前橋市大雪たすけあいセンター

とその判断を募集側ではなく応募側に委ねています。

社協も初めての災害ボラセン設置

こうした条件を設置する災害ボラセンと社協のほとんど全ては、災害ボラ募集を行うのが初めての組織です。そうした所は日常生活の中では福祉が専門でボランティアが担当領域とは言え、外部の人材と協働する「災害ボランティア」は未経験なのだそう。だからとにかく自分たちに面倒が起こらないようにと、ボラの初心者の第一関門として色々な条件設定をしてしまうのだろう…、というのがいろいろな人に話を聞いて浮かび上がってきた推論です。

確かにそうした外部者に対する不安は理解はできますし、実際に面倒な事も起きるのでしょう。一部には非常識ないわゆるバカボラもいたりします(もしかしたら山田NPO問題も影響しているのかもしれませんが)。

「来るな」というメッセージは本当なのか

しかし過去の災害ボランティアの検証や研究や報告を照らし合わせてみても、そうした多少のデメリットよりも結果というメリットほうが大きく上まわっているはずです。

なぜそれが伝わらず、意味の無いテンプレートの募集要項がいつまでもコピペされ続けているのでしょうか。

※駐車場の確保が困難なため自動車での来館はできるだけご遠慮ください。:秩父市社会福祉協議会
自分で移動手段及び食料等が確保できる方:甲州市災害ボランティアセンター

例えこうした条件を無くしたとしても、交通機関や宿泊や日程の関係などでそもそも現地に入れない人は行けません。またそれでも行こうという人は自力でも何とかして向かいます。そして社協のボラセンなどには登録せず有志の個人や組織で動いていきます。

つまりわざわざ入れる必要のないメッセージなのです。

そこまでするような人たちもそのほとんどは何も無謀な訳ではないでしょう。親類や知人への援助という人もいますし、そうした場合は土地勘もあるはずです。また独自の判断で動く人多くの人たちは、過去の支援経験から裏付けする自信や教訓を持っている場合が(これは個人的な感覚ですが)多いです。

あえてこうした募集要項条件に入れたメッセージが発する意味とは、実は募集ではなく「来るな」という逆説的なメッセージです。S・O・SではなくNO。それが本当に困っていないというメッセージならば良いのですが、経験もなく状況も把握仕切れていないだろう被災地の実際はどうなのか? 支援を必要としているのにもしそうでないのならば誤った情報発信でしかありません。

ここには援助を受ける力「受援力」がないのです。

例えば同じ雪害被災地、山梨県韮崎市の災害NPOは、過去の被災地支援の経験を踏まえて地元の災害支援の次の段階を読んで、被災地域以外からのボランティアを募集しています。

【他県から募集する理由】なぜ?わざわざ他県から募集するのか。それは東日本大震災の支援で学んだことです。同じ地域で出来ればいいのですが、同じ立場で自分のことで精一杯と感情的にそんな時人のことが考えられないようです。(中略)絶対数が足らずに進まない現状があります。(中略)一日でも早く渋滞を解消したり、雪で妨げられている日常生活の解消をしたい(中略):「災害ボランティア及び東京発応援隊募集」REviveJapan リバイブジャパン(2014年2月19日閲覧)

こうした積極的な「受援」も動き出したことは、東日本大震災の教訓を生かした動きと言えるでしょう。

もし本気で募集するのならば、必要なのはその判断力や技術力や能力であって、それぞれの在住地は関係ないのです。

育みたい受援力

宿泊場所についても、被災している中で準備もできないからとゼロ解答するのは被災地と支援者双方にとってあまりにも残念です。災害ボランティアの悩みは資金です。交通、宿泊、食べ物、トイレの中で、最も大きなコストは宿泊費や交通費。NPOや公務や業務ではない個人ボランティアは資金は自己持ち出し。旅館やホテルに連泊もできません。

例えば(避難所の開設もなく設備面でも問題ない場合は)公民館や体育館を開放したり、屋外でも(安全が確認されているのであれば)公園や駐車場を開放するだけでも、テントが張れたり寝袋で横になれます。実際、神戸や宮城でもテント生活での活動でした。北海道にはそうした性善説に基づいた無料の公的私的の宿泊施設がたくさんあります。

何も受援力とは、被災地に顎足付きで接待しろということではありません。ボランティアは旅行で遊びに行くのではなく、ただ使命感を抱いて仕事をしに行くのです。

ちょうど今は大学生が冬休みの時期にあたります。条件さえ合えば同様の時期だった、阪神・淡路大震災や東日本大震災の時のように人は集めやすい時期なのです。

(2014年2月20日加筆)

[了]



※以上のことは、当然のことながら全ての災害や被災地に当てはまるものではありません。個々の事情や地域によってその判断は変わります。


#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。

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