◉震災発レポート
走る走る、いわてを走る!
SVA移動図書館プロジェクト 陸高篇 ❹
〜東日本大震災の光景〜
岩手県陸前高田市・高田高仮設 ◉ 2011年7月17日
東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)
text & photos by kin
2011.8.30 up
《6》陸前高田◉他団体と急遽コラボ!
高田高仮設
続いて近くにある陸前高田市高田町長砂仮設団地(148戸/岩手県立高田高等学校第2グラウンド/5月31日完成)に到着。通称・高田高校グラウンドというように、山を切り開いたところにある高校のグラウンドで、元々は陸上トラックと野球場があったところに仮設住宅が建てられている。
到着すると、すでに別の団体がイベントを開いており、たくさんの人が集まっていた。訊いてみると同じ遠野からやってきた「遠野まごころネット」の関わっている企画のようで、炊き出しからサークル教室から物資の配布からと盛りだくさんの企画で盛大に催していた。その人気にあやかって、お隣のスペースに図書館を開設させてもらうことにする。
今回の設営時間は7分13秒3で、初回の半分の時間を記録。特に慌てて急いだりもせず淡々と動いたのだが、コツをつかんできたのだろうか。お隣さんのおかげで、住民さんたちもその帰りついでに立ち寄ってくれる。
設営が終わると、接客にあたるスタッフの数は足りているので、我々設営担当は特にやることもない。お客さんも少ないのにスタッフばかりがうろうろしていても、威圧感を与え邪魔なだけなのだ。ここは148戸もある結構広い仮設住宅だ。チラシを持って一回りしてみる。敷地の端は崖になっており、遠くを見下ろすと、そこには被災した瓦礫の市街地が広がっていた。海の美しい碧さとのコントラストが余計に哀しい。住民の方たちは毎日この光景を見ているのかと思うとやりきれない風景だ。
そしてこの崖の直下には、覆い茂る木々によって視界が遮られているが、このグラウンド敷地の所有者である岩手県立高田高等学校があるはずだった。低い標高に位置した高校校舎は津波で全体が水没し、生徒や関係者も犠牲になった。現在は遠く離れた大船渡の校舎に間借りしているという。こうして建つ仮設住宅の敷地の一つひとつにも、物語がある。
お隣のイベントは大盛況
まごころネットの催しを覗いてみる。タープの中で行われていた手芸教室には、10人ほどもの人が参加をしていた。お茶やあんみつのお接待もある。奈良の作業所の人が付けたという塩分濃度のとても濃い本来の梅干しも配っていた。外側では子どもたちの遊び相手をして、一緒に野球をしている。箱に入った支援物資は、本からおもちゃ、食器や衣類、小物など種類も量も幅広い。どれもが全国から送られてきた物資だという。
中には手作りのものもあり、例えば三重県鈴鹿市の障害者作業の方々による手作りの表札や、うちわに絵手紙のように絵を描いたものなどがあった。そのどれもが必需品でなおかつ足りないだろうと思われるものばかりで、その選択の的確さは絶妙である。
そんな総合商社的な支援イベントは、物資類もあらかた配り終えたようで余りが出たらしく、梅干しやあんみつなどのお裾分けを頂いた。
お昼を過ぎたころ、我々も交代で冷房の効いた車内に入り、慌ただしく昼食を摂った。この周辺は食事のできる飲食店も、食料を売っているコンビニもスーパーもない。しかもこの炎天下では弁当を買っても適切な保存ができないということで、お昼はみんな菓子パンや総菜パン、バナナなどの携帯食である。車に置いていたペットボトルのお茶は、すでにお湯となっていた。飲み物は、クーラーボックスで冷やしておかなければならない。
地盤が沈下した砂利路
高田高校グラウンドを撤収し、次の図書館開設地に向かう。次は6kmほど離れた広田半島にあるため、海沿いの道や山道を往く。途中の道路は、津波で路面のアスファルトが剥がされており、凸凹の砂利道を徐行して走る。復旧の気配すら感じない大船渡線の線路を渡る。瓦礫の残った小川には、炎天下で撤去作業をするボランティアチームの姿見える。この天候では過酷な作業となっている。
道沿いの電柱の上の方には、いまだに津波で引っかかった瓦礫がそのままにぶら下がっていた。海にはどこからか流された家の屋根が頭を覗かせ、漁具の浮きや漁網が滞留している。津波の押し寄せた陸地も、地震で地盤沈下した土地に水が溜まり、湿地帯のような趣きもする。しかし傍らには、小さなひまわりが踏ん張って咲いている。
ここは本格的な復旧作業すら始まっていない地域だ。地震発生時からあまり風景が変わっていないのではないだろうか。海面と同じかそれより低いこの海沿いの土地は、その防災対策などの基本計画が策定されないと、農地も道路も宅地も復興は進めようがないだろう。途中でトイレ休憩を挟み、広田小学校仮設住宅を目指した。
[続く]
#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。
◉データ
いわてを走る移動図書館プロジェクト
主催:公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 岩手事務所(略称:SVA)
開始日:2011年7月17日
場所:岩手県 陸前高田市、大船渡市、大槌町、山田町
各地域の仮設住宅団地を隔週巡回。
後援:陸前高田市教育委員会、大船渡市、大船渡市教育委員会、
岩手県立図書館、社団法人日本図書館協会
協力:3.11絵本プロジェクトいわて
- 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会
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- 東日本大震災 復興支援プログラム 本を売って被災地の移動図書館を応援しよう - ブックオフオンライン
- [2011/08/23]本を売って被災地の移動図書館を応援しよう - ブックオフオンライン スタッフブログ
- yamamoto.lab - 明治大学理工学部山本俊哉研究室:陸前高田市の被災前写真(渡辺雅史氏撮影)、支援活動、調査